樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

国歌は語る(最終回)=関係五か国の総まとめ(Y-55)

このシリーズでは、国名や国旗・国歌にはその国の成り立ちや性格、或いは民族の願い

などが内包されているという前提に立ち、我が日本と関係の深い4か国について個々に

述べてきましたが、最後に総まとめとして、分析比較してみたいと思います。

この作業は、本来“人を「束ねない」「仕分けない」”という私のモットーに反するもの

ではありますが、敢えて誇張気味に、そしてやや意地悪にまとめてみたいと思います。

要素として取り上げたのは、サイズ(面積、人口、GDP、軍事費)、第一印象(真っ先

に思い浮かぶ特質)、精神的支柱(規範)、価値判断(何で動かされやすいか)、外交

(歴史的に見た外交姿勢)の5項目で、出来上がった結果が次の表です。

              <5か国の比較表>

 

サイズ(日本を1としたとき)

 

 第一印象

 精神的支柱

(規範)

 

価値判断

 

外交

面積

人口

G

D

軍事費

地形的或いは歴史的な

特質

評価・判断或いは行為などのよりどころ

何で動かされやすいか

歴史的に見た時の外交姿勢

 日

島国

辺境

美と和

空気

外的圧力

忖度

Ignore

26

19

新興

皆の衆

理想/現実の波

独善的公正

Contract

 中

25

12

中華

共産

イデオロギー

損得

以夷制夷

wolf of war

 露

45

0.3

極北

化外

猜疑心

恫喝

Spy

0.3

0.4

0.3

半島

事大

儒教

自大

Turn

 

<表の解説>

サイズ :日本を1とした時のサイズで、特に目立つのは、ロシアのGDPに対する軍事 

    費の大きさです。また、今回北朝鮮は対象から外しましたが、仮に南北朝鮮が

    統一されると面積、人口は0.6になり、GDPや軍事費がどうなるかは不明です。

第一印象:私の頭に真っ先に浮かんでくるその国の特徴です。

     日本の「辺境」は内田樹氏、米国の「皆の衆」は渡部昇一氏の説からの引用

    ですが説明は省略します。ロシアの極北、化外というのは、グーグルマップで

    ロシアの国土を流し見したときの印象です。恐ろしく広大で、高緯度、国土の

    大半が樺太以北にあり、ウラル山脈より東は人の気配がほとんどありません。

    韓国の「半島」と「事大主義」には宿命的なものを感じます。

 

精神的支柱:われわれ日本人は規範となるべき宗教や思想哲学を持ちません。それに代

    わるものとして、「美」と「和」があると考えます。“日本人は善悪や正否を

    美醜で判断する”という傾向が確かにあり、また“和を以て貴しとなす”という心

    情は脈々と受け継がれ、それが日本の個性を形成しているような気がします。

    中国の「イデオロギー」は、歴史的に見れば”異質“で、この先何百年もという

    ことにはならないでしょう。

    ロシアは基本的に”力“の信奉者で、ナポレオンやヒットラーに勝ったことが国

    民のよりどころとなっています。

価値判断:いいタイトルがなく「価値判断」としましたが、”何に動かされやすいか“と

    いうことです。

   ・(日) 日本社会では、その場の雰囲気が物事を決めるとよくいわれ、また、な

    かなか決められないことは、究極的に外圧によって決することが多いように思

    います。コロナ禍におけるマスク着用や行動自粛、幕末の開国など、そのよう

    な例はいくらでも挙げられるのではないでしょうか。

   ・(米)アメリカは基本的に皆の衆国家で、一般大衆が理想と現実の波のなかで

    揺れ動いているように見えます。民主主義とはつまるところ “よりましなと

    ころ”を選択することであり、“現実の矛盾をどこまで許容するか” であること

    を示しているのがアメリカであると言えそうです。

   ・(中)中国はどちらかといえば商業民族で、価値判断の基準は「損得」ではな

    いかと思います。中国共産党は、当初の理想を失うというよりは自ら破棄し、

    いかにして「漁翁得利(漁夫の利)」を占めるかに集中しています。そして国

    民がそれを支持しているのは、もともと商業民族的な資質があったからだと考

    えます。

   ・(露)ロシア(人)は、“外から攻められた記憶”と”爪はじきにされた記憶“が

    深く刻まれており、基本的に外国に対する”猜疑心“から脱することができない

    ようです。国際社会において中国と歩調を合わせる例は数多くありますが、そ

    れは対米・欧政策上の方便であって、信頼関係を結んでいるわけではありませ

    ん。露はいかなる国とも対等の同盟関係は結ばず、兵器はほぼ純国産で最高レ

    ベルを保ち続けています。極論すれば、“猜疑心”が国を動かしているが如くに

    見えるのです。

   ・(韓)韓国はときに“情治国家”と呼ばれることが在ります。国際条約も国内法

    も裁判所の判決も”情“に左右されることがよくあるからです。良くも悪くも儒

    教的な思想が染みついており、”あるべき姿“が定められたルールを超越すると

    いう現象は国際的にも国内的にもしばしば軋轢を生んでいます。

外交 :・(日)一般的に、国民は自国政府の外交には不満を持つようですが、特に日

    本はその傾向が強いように思います。それは政府ばかりでなく民間の交渉にお

    いても言えることで、いわば国民性に根差した問題なのかもしれません。何故

    そうなるかといえば、日本人は交渉の際に最初から相手方の立場を考慮して、

    やや自分有利の条件を提示するのに対し、相手方は自分側最大有利の条件を出

    してくるからです。それが彼らにとっては、”フェア“な行動原則なのです。

    言い換えれば、日本の”美と和“の精神が”忖度“として作用し、不利な戦いを生

    んでいるのかもしれません。

    もうひとつ、[Ignore] と記しているのは、時に“知らぬ顔をする”という意味で

    す。“面従腹背”と言ってもいいかもしれません。これは“辺境”であればこその

    対応といえるでしょう。

   ・(米)40年ほど前、仕事の都合でアメリカに1か月ほど滞在しましたが、その

    当時は喫煙規制は極めて緩やかなもので、吸い殻のポイ捨てもお咎めなしとい

    った状況でした、ところが数年後に訪米したときには状況は一変し、工場内は

    全面禁煙、ホテルなども屋外の片隅で、移民と思しき有色人種が暗い表情で喫

    煙している姿をたまに見るといったほどの徹底ぶりでした。

    アメリカはかつて禁酒法を成立させた国です。その国が未だに銃規制をするこ

    とができません。西部劇では、悪漢がろくに銃を使えない市民をけしかけて、

    正当防衛の名のもとに殺害する場面がよくあります。“多様性の尊重”をうたい

    ながら、アメリカはあれこれちょっかいを出します。アメリカの「公正」は多

    分に独善的な香りを漂わせていると言わざるを得ません。但し契約はよく守る

    国民性でもあります。それは宗教からきているのかもしれません。

   ・(中)中国の伝統的な外交方針は「遠交近攻」と「以夷制夷」で、基本的に

    「漁夫の利」を求める姿勢であったと考えますが、コロナのあたりから態度が

    変わり「戦狼外交」(wolf of war)とも呼ばれる強気の姿勢や発言が目立つよ

    うになりました。これはまさに国力に対する自信の表れであり、いよいよ武力

    による台湾統一に踏み切るのではないかと懸念されていましたが、プーチン

    失敗を目の当たりにして、その懸念はやや遠のいたと見てもよさそうな気がし

    ます。

   ・(露)ロシアの強みといえば「資源」と「軍事力」、弱みは対外的には信頼感

    の欠如かと思いますが、対内的には種々の問題があります。しかしそれらは、

    つまるところ平均寿命に集約されています。ロシアの平均寿命は、最も高かっ

    たコロナ前の2019年で、男性68.2・女性78.2歳です。これは、183か国中の118

    位と74位ですから、開発途上国のレベルと言わざるを得ません。しかも各国が

    概ね順調に寿命を延ばしている中で、ロシアは1960年ごろから上下を繰り返し

    全く向上する気配がありません。短命に終わる最大の要因と目される「アルコ

    ールの過剰摂取」対策もなく、政府予算の多くは、資源開発と軍事力の増強に

    向けられ、社会保障関係は貧弱です。そして、強みである資源力と軍事力に物

    を言わせて「恫喝外交」と「スパイ活動」を続けていると言えば言い過ぎでし

    ょうか。

   ・(韓)第一印象の項に「事大」と書きましたが、この項には「自大」と入れま

    した。「事大」は孟子の言葉で、弱いものは“大に事(つか)える”ことを良し

    とする思想ですが、これを「自大」とセットにしているのが韓国の伝統的な外

    交です。「自大」は自らを大きく見せることですから、バランスをとるために

    必要なことなのかも知れません。もう一つ、「Turn」を挙げたのは、この国は

    ときに変節をするという意味です。つまり、“手のひら返し”です。これらはす

    べて、「半島」で生き延びるための“宿命”であったとして、同情してもいいの

    ですが、そうすればまた彼らはそれに反発するでしょうね。しかし、半島が

    中・露になることだけは阻止すべきであり、我が日本にとって極めて重要な国

    であることに変わりはありません。

    以上が最後のまとめですが、初めにお断りした通り、「誇張」と「意地悪」が

    出すぎましたでしょうか。

                          2023.07.26