史上最多9人もの候補者が林立した自民党総裁選は、半ば予想通りに進み最後はちょっ
としたサプライズの体で決着した。
第一回目の投票では、議員票と党員・党友票それぞれを同数の368として合計736票で
競い、予想通りの3候補が次の通り上位に並んだ。
候補者 議員票 党員票 合計
高市早苗 72 109 181
石破茂 46 108 154
小泉進次郎 75 61 136
4位以下は党員・党友票が30票にも満たず知名度の低さが現れていた。
事前の予想では、決戦投票の組み合わせは高市/石破、高市/小泉、石破/小泉の3通りが
あるが決選投票で石破が勝利する可能性は低いというのが大方の予想であった。
そして、上表の結果により、高市VS石破の決戦となった
”石破候補は勝てない”という根拠は、1回目の得票数にも表れている通り自民党議員に人
気がないからである。決選投票では、党員・党友票は都道府県連の47票に替わるため、
大差はつかない。つまり、議員票の比重が格段に大きくなるので石破候補の勝利は難し
いというわけだ。しかも、今回は頼みの党員・党友票でさえも高市候補に後れを取って
いる。だからこの時点では、明日の一面トップが”初の女性総理誕生”になることを誰も
が予想した。
一足先に決まった立憲民主党の野田佳彦代表は、松下政経塾の第1期生で、高市は5期生
だ。遂に故松下幸之助の悲願が実を結んだと思った人も少なくないだろう。
ところが、決選投票の集計が終わり、係官が壇上の選挙管理委員会の面々にその結果を
示した時、彼らの表情は明らかに異様で何度も見返す委員もあった。彼らにとって
も”予想外“であったであろう結果は、次の通りである。
候補者 議員票 都道府県連票 合計
石破茂 189 26 215
高市早苗 173 21 194
かくして、党内野党を自負し、“裏切り者”とまで呼ばれたこともある石破茂が自民党総
裁に選ばれ、第102代総理大臣に就任した。組閣に当たっては、何人かからは固辞さ
れ、花も実もない内閣が出来上がった。党内基盤は極めてと言っていいほど弱い。
そもそもこの番狂わせは、消去法により生まれたものである。(と思う)
「裏金問題」という逆風の中で迎える総選挙の顔として、“誰が最も無難であるか”を考
えた議員たちの回答であり“打算”なのである。
ところが、現実は彼らの思惑通りには運んでいない。
就任前に表明した解散総選挙のプランは、タイミングとして”勇み足“であるばかりでな
く、もともとライバルの小泉候補が述べた方針であり、当時の石破候補自身が”与野党
が議論して国民に判断材料を提示してからにするべき“と例によって筋論を述べていた
ことは記憶に新しい。
この心変わりが、”ご祝儀相場のうちに“或いは”野党の準備が整わないうちに“という与
党議員の思惑を反映したものであることは明白で、新内閣の支持率は歴代最低レベルで
スタートした。4日に行われた所信表明では、五つの“守る”について語り始めるや”約束
を守れ!“という怒号が飛び交い、野田代表からは”近代稀に見るスカスカの所信表明”と
まで酷評された。
新総理就任後のあいさつ回りで、旧知の前原誠司代表(教育無償化を実現する会)から
“石破カラーを出して下さい”といわれ、“出したらぶっ叩かれる”と応えたやり取りが、
彼の現在位置を如実に示しているが、それでは本人にとっては勿論のこと、も自民党に
もマイナスであることを自覚すべきである。
誰が言い出したかは知らないが、新内閣を“割りばし内閣”と評した声がある。その心
は、”一回きりの使い捨て“だということらしい。今のままでは、その公算は極めて大で
あると言わざるを得ない。
ならばどうするか。開き直るしかないではないか。小泉純一郎に倣って、”自民等をぶ
っ壊す“と花火を打ち上げるのである。テーマは当然”憲法改正“だ。そもそも自民党は、
憲法改正のために自由党と民主党が大同団結して誕生した政党だ。このテーマは自民党
をまとめるのに最も効果的であり、野党をばらけさせる効能もある。”安倍総理の下で
はやりたくない“と言っていた消極的賛成派も、”今なのか“という反対理由しかあるま
い。
正論・筋論なら、新総理が最も得意とするところである。実は、憲法改正は五つの守る
とも密接につながっている。”割りばし”と言われようが、初の憲法改正を断行した総理
として歴史に残ることは間違いない。
ところが、所信表明では“在任中に発議まで・・”と最後に取り上げただけで、まるで気
合が入っていない。ここは自身の延命など考えず一気に勝負に出てもらいたいと思うの
だが・・。微かな期待は、すべて来る総選挙にかかっている。
2024.09.05