樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

ECIと日本(J-138)

読売テレビに「そこまで言って委員会NP」というバラエティー番組がある。

2002年5月に特別番組として放映されたのが始まりで、2003年からレギュラー番組化さ

れ今に続いている長寿番組だ。もう20年を超えたことになるが、日曜日のお昼というこ

ともあり、随分見てきたように思う。初めの頃は「たかじんのそこまで言って委員会

というタイトルのとおり、やしきたかじん冠番組であったが、2014年に彼が亡くなり

司会役は辛坊治郎、そして現在の黒木千晶へと受け継がれてきた。パネリストもかなり

入れ替えがあり、初期のころと比べると“毒”あるいは“わさび”が消えたような気がしな

くもないが、その中に最近登場し始めた大空幸星(本名)という準レギュラー格の若者

がいる。他にも多くの番組に出演しているので顔は知られているはずだ。職業は社会起

業家或いは「NPO法人あなたのいばしょ理事長」となっている。このNPO法人は彼が慶

応大学在学中に、“誰もが問題を抱えた時に頼れる人に確実にアクセスできる仕組みを

作りたい”という思いから設立したもので、厚労省自殺防止対策事業に指定され2022年

度には1億5000万円の公的支援を受けている。

 

直近(2.11)の「そこまで言って委員会」のテーマは“日本も捨てもんじゃない”がテー

マであったが、その中で大空幸星が“ECIという指標で日本は16年連続世界一”という発言

をした。議長(司会)も他のパネリストもこれに反応を示さなかったが、ECIという言

葉自体自分としては初耳だったのでちょっと調べてみた。

ECIとは「Economic Complexity Index 」の略で、「経済複雑性指標」と訳される経済指

標の一つである。元々はMITメディアラボのセザー・ヒダルゴとハーバード大のリカル

ド・ハウスマンらによって提唱されたものらしいが、その論文が発表されたのが2009年

というから比較的新しい理論だと思われる。なじみが薄い理由はよくわからないが、

一つには訳語がよくないのかもしれない。「complex」は“多くの部分から成る”という

意味なので、”複合的経済指標“とでもいった方がよさそうに思う。それはまあ好みの問

題に近いとして、最大の問題は指標を数値化する計算式がなんだかややこしすぎるので

ある。実のところ、ほとんどの経済学者に理解されていないのではないかとさえ思う。

超単純に言えば“輸出品の多様性を示したもの”とも言えそうだが、もう少し丁寧に言う

と、“国家の多様性と輸出品目の希少的価値を考慮して数値化したもの”ではないかと思

われる。

具体的に言えば、“世界に通用するオリジナリティーのある製品やサービスを輸出して

いる国ほどECIが高くなる”ということになる。ここで注目すべき事実は“ECIの値とGDP

にギャップがある場合は将来的にその差が埋まるように進む”ということだ。これは他

の経済指標よりも正確に将来のGDPの成長を予測しているともいわれているらしい。

今朝の新聞では、日本のGDPがドイツに抜かれ世界第4位に転落したと報じられたが、

現実問題として、日本はECIとGDPにギャップがある国の典型のようにも見える。

しかしECIの理論によれば、長い目で見れば今後に期待が持てるということになる。

ECIの最新データは、「経済複雑性観測所」(The Observatory of EconomicComplexity)

が発表しているので、その上位と気になる国をピックアップすると次のようになる。

 

 順位  国名    ECI   5年前から   10年前から

                の変動     の変動

 

 1  日本     2.43    ―       ―

 2  スイス    2.17    ↑ 1     ↑ 1

 3  韓国     2.11    ↑ 4     ↑ 8

 4  ドイツ    2.09    ↓ 2     ↓ 2

 5  シンガポール   1.85    ―        ↓ 1

 6  オーストリア    1.81    ↓ 2     ↑ 1

 7  チェコ    1.80    ↓ 1     ↑ 2

 8  スウェーデン 1.70    ―        ↓ 3

 9  ハンガリー  1.66    ―        ↑ 5

 10  スロベニア  1.62    ↑ 3     ↑ 3

 11  アメリカ   1.55    ↑ 1     ↑ 1

 12  フィンランド 1.55    ↑ 2     ↓ 1

 13  イギリス   1.51    ↓ 2     ↓ 5

 14  イタリア   1.44    ↓ 2     ↑ 3

 16  フランス   1.37    ↓ 2     ↓ 1

 18  中国     1.34    ―        ↑ 6

 42  インド    0.54    ↑ 10     ↑ 8

 52  ベトナム   0.14    ↑ 11     ↑ 11

 64  ロシア   -0.04    ↑ 1     ↓ 3

 

ご覧の通り、日本は不動の首位をキープしている。

韓国の10年、インド、ベトナムの直近5年間の躍進が著しい。

中国は5年前から成長が止まっている。

ロシアのECIは途上国並みの低い数値である。

 

ECIの数値で一つ注意が必要なことに、農産品や原材料を多く輸出している国はオリジ

ティーの高い製品を輸出していても計算上数値が下がるということがある。

いずれにせよECIの数値は、日本が独自性と洗練度の高い多様な製品とサービスを世界

に提供し続けているということを示している。そして、これからの日本も、その方向に

進み続けるしかないのだろうと思う。

それは、一言で言えば,”文化を売る”ということであり ”Cool Japan”にさらに磨きをかけ

ると言い換えてもいいだろう。              

                             2024.02.16