樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

ウクライナのコサック魂(J-107)

 

大方の予想に反して、ウクライナが驚異的な頑張りを見せている。そのエネルギーの源は一体どこにあるのだろうか。

 “そのヒントはここにある”

ウクライナの国歌を引っ張り出してきたのがフジTVの「めざまし8」である。

いいところをついていると思うが、言葉足らずの感がしたので少々掘り下げてみたい。

日本語訳は色々あって、定番らしきものはなさそうだったので、そのいくつかを参考に

して、自分流に意訳してみた。

 

     <ウクライナは永遠に> 

   1.ウクライナの栄光と自由は滅びず

     運命は再びわれらに微笑む

     敵は陽の下の露と消え

     我らの地は自ら治める

     身魂を捧げよう 自由のために

     そして伝えよう 我らがコサックの末裔であることを

   2.同胞たちよ 戦場であろうとも

     立ち上ろう サン川からドン川まで

     我らは他者による支配を認めない

     ウクライナに幸運は再び巡り

     黒海は微笑みドニプル川は歓喜に満ちる

     身魂を捧げよう 自由のために

     そして示そう 我らがコサックの末裔であることを

   3.我らの忍耐と努力は報われ

     自由の歌はウクライナに響き渡る

     カルパチア山脈にそして草原に

     ウクライナの名声と栄光は世界に知れ渡る

     身魂を捧げよう自由のために

     そして示そう 我らがコサックの末裔であることを

 

この歌に謳われているのは「自由」と「独立」であり「不撓不屈」の精神である。

そして、繰り返し強調されているのは、“我われはコサックの末裔である” という自分

たちのルーツである。

では、コサックとは何者なのか。

「コサック」という言葉は、「自由な人」「豪胆な者」を意味するトルコ語由来だそう

だが、時と場合によっては「放浪者」「無法者」といったニュアンスもあるらしい。

遺伝子的にはタタール人とスラブ人の混血が主体となっているようだ。

元々はウクライナと南ロシアのあたりに生まれた軍事的共同体で、16世紀ごろにはポー

ランドに属するザポロージャ・コサックとドン川流域でロシアに依存していたドン・コ

サックの二つに分かれていた。自由と自治を好む性格から、しばしば反乱を起こしては

抑えつけられるということを繰り返していたが、ロシア革命後のソ連の時代には苛烈な

弾圧を受け、人口の7割が死亡したとも言われている。そのために、WWⅡではコサッ

クはドイツ軍に味方した。今次のウクライナ戦争では両者が相手を“ナチ”呼ばわりして

いるが、どちらにもこじつけはあるにせよ言い分があるともいえる。

2番の歌詞に出てくるサン川は、ポーランド国境のカルパチア山脈からバルト海に達す

ヴィスワ川の支流でポーランド領にあり、ドン川はヴォルガ川と運河で結ばれたロシ

ア領内の大河であって、いずれもかつての東西の激戦地である。

歴史的に見れば、ロシアとウクライナは密接なつながりがあり、プーチンベラルーシ

ウクライナは同胞であり一体だという。しかしウクライナにしてみれば迷惑な話だ。

彼らにとってプーチンがやっていることは、例えが悪いかもしれないが、いわば“俺の

女に手を出すな”と凄むヤクザか “ストーカー殺人” に近い感覚かもしれず、このし

こりは日韓関係どころのレベルではなさそうにみえる。

それにしても、ウクライナ人の不撓不屈の精神には恐れ入る。

先の北京パラリンピックでは世界第2位のメダルを獲得したが、今にして思えば、それ

も逆境に強いウクライナの証明だったのだろうか。

これが”コサック魂”といえば恰好はいいが、そろそろ何とかならないものか。

                         2022.4.22