樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

サクラサクWBC(J-130)

球春という言葉は「広辞苑」には載っていない。しかし、よく目にする言葉でもある。

一般的には、プロ野球チームがキャンプをはり、オープン戦が始まる頃を言い、なんと

なく桜の開花と合わせて”もうすぐだな“という気分が徐々に高まるシーズンである。

ところが今年は、いきなりピークがやってきたような感がある。WBCの開幕である。

WBCが始まったのは2006年だから歴史は浅い。今回は第5回目だが、コロナのせいで2年

延期されたので6年目ということになる。大会がこれまでにない盛り上がりを見せてい

るのはそのせいでもあるが、何と言っても今回は、各国がMLBの主力選手中心のベスト

メンバーを組んできたことにある。だれもが今回の優勝チームこそが世界一の名にふさ

わしいと認め、選手も目いっぱいのプレーを演じているからだ。

だから、横綱大関を欠く大相撲は言うまでもなく、センバツ高校野球もサッカーも

その他もろもろのイベントも“そういえばやってたね”程度の扱いになっている。

日本チームも歴代最強との呼び声高く、優勝候補の一角と目されているが、他の有力チ

ームもほぼ歴代最強なので、決勝戦までの道のりは険しい。願いは米国チームと決勝戦

で戦い勝利することだが、幸か不幸か、米国がグループリーグでメキシコに敗れCグル

ープを2位で勝ち上がったので、顔を合わせるとすれば決勝以外にはない状況となった。

その米国は、昨日(3.20)キューバを14-2の大差で粉砕し、一足先に決勝の舞台で待ち

構えている。それに挑戦できるのは日本対メキシコの勝者である。

その試合が今日(3.21)行われ、日本は村上のサヨナラ3ランで劇的な勝利を収めた。

その興奮がまだ冷めやらない状態なのだが、そのゲームをプレイバックする前に、ここ

までの経過を振り返ってみたい。

 

今回のWBCは、参加20チームがA~Dの4組に分かれ総当たり戦を実施し各組の上位二チ

ームが準々決勝に進みそこからは敗者復活のないトーナメント戦となる方式である。

そしてベスト8に進んだのは、やはりランキング上位のチームであった。

D組ではランキング2位のドミニカが敗退したが、これは、プエルトリコ、ドミニカとい

う三つ巴の中での結果であり、いわゆる番狂わせには入らない。唯一の番狂わせに該当

しそうなのは韓国(7位)の敗退で、その代わりにオーストラリアが勝ち上がった。

ベスト8のチームの成績は下表のとおりで、実は日本の成績が際立っている。

 

            ランキング  勝  負  総得点 総失点 得失点差

A組  キューバ     8   2  2   25   15   10

    イタリア     10   2  2   20   17   3

B   日本       3   4  0   38   8   30

    オーストラリア  16   3  1   29     19   10

C   メキシコ     6   3  1   26   16   10  

    アメリカ     1   3  1   26   16   10

D   ベネズエラ    5   4  0   23   9   14

    プエルトリコ   4   3  1   30   12   18  

 

この結果を見て、アメリカのスポーツ誌などで日本チームの評価が急上昇し優勝候補の

最右翼に上げられるようになった。とくに、日本の投手陣は間違いなくトップであり、

懸念材料は”時差“だけだという評判が立った。

そして準々決勝では、日本がイタリアに9-3、アメリカがベネズエラに9-7、キューバ

オーストラリアに4-3、メキシコがプエルトリコに5-4で勝ち、勝利した4チームがマイ

アミのローンデポ・パークに集うこととなった。日本とキューバは東京から海を渡って

時差ボケと闘いながら中三日で戦う不利があり、その影響もあったのかキューバは元気

なくアメリカに大敗を喫した。

何となく不安感が漂う中で、3.21春分の日、日本時間朝8時から準決勝対メキシコ戦は始

まった。

後攻日本の先発投手は佐々木朗希、メキシコは大谷と同僚のサンドバルである。

両投手の好投で、3回まで両チームとも無得点のまま試合は進んだが、4回表“わずかば

かりの運の悪さ”が佐々木を襲う。2死走者なしから4番テレスのバットの先に当たった

球がシフトを敷いた守備の裏をかく形でヒットとなり、続く5番パレデスの打球がサー

ド後方へのポテンヒットとなって2死1,2塁、ここで6番ウリアスに左中間へのホームラ

ンを打たれ3点を先行される。

日本もそこから必死の反撃に出るがなかなか得点に結びつかない状況が続く。

4回裏は2死1,3塁で村上が見逃し三振、5回裏は2死満塁で近藤がレフトフライ、6回裏

は大谷のヒットと2つの四球で2死満塁となるが源田がレフトフライ。

ここまで日本のチャンスにおける打球は、メキシコの元気印アロサレーナ(レフト)の

好捕に阻まれイライラは募るばかりである。嫌な雰囲気が漂い始める中、7回裏に転機

が訪れる。この回2アウトから近藤のヒット、大谷の四球で走者2人となったところで4

番吉田がその2球前に空振りしたチェンジアップを見事に捉え3ラン、同点に追いつく。

ところが8回、山本がメキシコお得意の集中打をあびる。1死のあと1,2番に連続ツーベ

ースを打たれ1失点。さらにヒットを続けられてマウンドを降りる。救援の湯浅は4番

テレスを三振に切って取るも、5番パレデスにレフトに運ばれる。ここでさらに1点を奪

われるが、続く走者を本塁上でタッチアウトとし、この回の失点を2点に食い止める。

8回裏日本は、岡本のデッドボールからチャンスを広げ、代打山川の犠牲フライで1点差

に詰め寄る。

9回表、日本は大勢がマウンドに上がりデッドボール一つを与えるも12球で締め、最後

の9回裏の攻撃を迎える。

9回裏は3番大谷、4番吉田、5番村上と続く好打順だが、相手は実績のあるクローザー

G.ガイエゴスである。何とかして1点もぎ取れば延長に入り投手力と小技で日本が有

利になる・・と思う間もなく、世界のショウヘイが初球を打ってツーベースだ。つづく

吉田が四球を選んで村上を迎える。ここで普通の監督なら不振の村上に代えて周東を代

打に送り、1死2,3塁とすれば何とかなる、周東の足なら無死満塁もあり得ると考える

だろう。ところが周東は吉田の代走として1塁に向かい、打席は村上のままだ。栗山監

督は“この回で決めるぞ”という意思を示したのである。これに村上も応えないわけには

いかない。1-1からの真ん中付近の球を見事にとらえると球はセンターの頭上を越え、

大谷に続いて周東が一塁から俊足を飛ばして一気にホームイン。歴史に残る劇的な逆転

サヨナラゲームとなった。

 

世は桜の季節である。

その昔、スマホやインターネットがなかった時代、「サクラサク」は、物事が成就した

ことを示す暗号としてよく使われた。例えば、受験などをした場合、その合否をすばや

く確認するには、張り出される受験番号を確認しにいく必要があった。だから、遠くに

住む受験者は代わりに確認して知らせてくれる業者と契約を結んでいた。それを電報で

知らせてくれるのだが、合格なら「サクラサク」で不合格なら「サクラチル」というの

が決まり文句であった。

明日の決勝戦、勝てば「サクラサク」ということになるが、それが決まるのはあと10数

時間後である。何とか満開の桜を見たいものだが、その結果が分かる前にワクワク感の

ままで一旦このブログを区切っておこうと思う。

                            2023.03.21