樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

O騒ぎの顛末や如何に(J-91)

“O騒ぎ”というのはオミクロン株に関する一連の騒動のことである。

我が家では、“デルタの次はオミクロンなの?”という妻の一言で始まった。

“いや、その間には大したことない変異株がいくつもあったということだろう。

ギリシャ文字とアルファベットはよく似てるから・・ABC・・・LMN・O“と指折り数

え、”15番目か、そんなにあったのかなあ、ちょっと調べてみるワ“

と答えて調べてみたら次のようなことが分かった。

実は直前におけるもっとも新しい変異株は、ミュ-(μ)で、次はニュ-(ν)となる予

定がNewと混同される恐れからと飛ばされ、その次のクサイ(ξ)もその英語表記が習

近平と同じXiに重なることから避けたらしい。真偽は定かでないが、しばしば疑惑がも

たれるWHOと中国の関係からすれば大いにありうる話でもある。

 

オミクロン株の正体は不明(データ不足)とのことだが、次のようなところまでは分か

っているらしい。

・変異した部分が30くらいあり多様性に富む。特にH655Y、N679K、P681Hという変異

 は、細胞への侵入しやすさが増している可能性が高く、またE484Aという変異は免疫

 を回避する特徴を持っている疑いがある。したがって、感染・伝播性の増加、ワクチ

 ン効果の低下、再感染リスクの増加が強く懸念される。

重篤度については情報不足により不明(現在のところ無症状や軽症者が多い)

・診断・検査への影響は特になさそうである。(従来方法で可)

 

以上の通りで、今のところ感染者は比較的軽い症状でおさまっているようだが、最初に

感染が確認された南アフリカでは、急速にデルタ株がO株に置き換わっており、クリス

マスや年末年始を間近に控える世界各国は敏感に反応した。

スピード感がないと批判された旧政権の轍を踏んではならぬと、日本政府もすぐさま強

硬策に出た。

11月29日、岸田新政府は30日以降外国人の入国を原則禁止し、一日の入国者総数を

5000から3000人に引き下げた。この処置に対するメディアや世論の評価は、概ね肯定的

であった。しかし、この決定を受けて国土交通省がその日のうちに、すべての国際線の

予約を1か月間停止するよう内外の航空各社に要請したことが12月1日に伝わると、今や

オピニオンリーダー的存在の橋下徹氏が猛然と噛みついた。

“緊急事態宣言下でもないのに国民を締め出すとは何事か”というわけである。

全くその通りなのだが、国土交通省の判断もとりあえずの処置としては頷ける部分もあ

る。1日3000人という枠に収めるために新規予約を制御しようとしたのであり、既に予

約している人は帰国が可能だ。決して全面的なシャットアウトではない。その説明にと

りかかることもできたかもしれないが、新政権はあまりメンツにはこだわらないらし

く、国土交通省のせいにすることもなく、翌日にはあっさり予約停止措置を撤回した。

そのあたりはなんだか頼りなくも見えるが、岸田総理が自ら“売り”にしている ”聞く

力“の証なのかもしれない。

 

オミクロン株はその後も恐ろしい勢いで拡散している。

しかし、どうやらその毒性は強くなさそうでもある。むしろ普通の風邪に近づいてい

るようにも見える。

冷静になって考えてみれば、新型コロナの変異は進化なのである。宿主に害を及ぼさな

いように変異したものが生き延びるわけだ。

まだデータ不足なのかもしれないが、もしオミクロン株の症状が風邪程度であるとすれ

ば、現在デルタ株による感染が再拡大している地域では、むしろオミクロン株が救世主

的な役割を果たすことになるかもしれない。

 

「京大おどろきのウィルス学講義」(PHP新書、宮沢孝幸)には、生物の進化に貢献し

てきたウィルスもあると書かれており、あとがきには、「ウィルスは決して悪者ではな

い」という言葉がある。あたかも腸内細菌の「善玉菌」「悪玉菌」のように、ウィルス

にも「善玉」「と「悪玉」があるような感じだ。

いつかこの先、悪玉ウィルスをやっつけるために善玉ウィルスを利用する時代が来るか

もしれないと、勝手に空想したりもするオミクロン騒動である。

                            2021.12.6