樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

一年で最も嫌なとき(Y-35)

日本の四季は美しく、それぞれに趣があり味わい深い。

しかし私には、毎年それを忘れさせるような苦手な時期が存在する。

それが今のこの時期、12月の数週間である。

 

先ずは気候の問題だ。

元来、寒さは苦手な方だが、厳寒期よりもこの時期―ウィンドブレーカーでは少々寒く

ダウンを切るにはちょっと早い-この中途半端な寒さが嫌いなのである。

さらに、いわゆる乾燥肌なので、この時期になると体のあちこちが痒くなる。

昔なら背中を搔いてくれた妻も、今は黙って“孫の手”を差し出すだけと判っているから

頼めもしない。

孫の手で掻くとますます痒くなるからじっと我慢する。

やがて慣れてくるが、それまでがつらい。

 

二つ目は大掃除である。

拭いたり、磨いたり、塗ったりは全く苦にならないのだが、“ほこり”がまずい。

どうやらハウスダスト・アレルギーがあるようだ。

何年か前、親の遺品整理中、私の小学校時代の通信簿を見つけて開いてみたら、

“特に問題はないが、大掃除の時にさぼることがある”というコメントがあった。

おもわず苦笑したが、私の”アレルギー“は症状は軽いながらも年季が入っている。

今は電気掃除機のおかげでずいぶん助けられているが、はたきをかけたり書類を

シュレッダーにかけたりすると症状が出る。

更にもう一つ、毎年不要と思われる本を処分するのだが、これが悩ましい。

「捨てなければ」と言われそうだが、それはいわゆる”積読“になるだけだと思うから

心を鬼にして処分する。たまに後悔することもある。

 

三つめは例年行事のごとく、12月8日の日米開戦記念日に絡む特集記事やTV番組が繰り

返されることだ。

詳細は省くが、日本側指導者たちのほとんどが日米開戦は避けるべきだと思いながら、

ルーズベルトの仕掛けた罠にはまって先に手を出したと読めるストーリーが多い。

その日本外交の未熟さを見せつけられるのが悔しく情けない。

気分が悪くなるのを承知で何度でも見てしまう自分もまた情けない。

 

四つ目はこの時期、喪中欠礼のはがきが届くことである。

それも、亡くなった方々がだんだん自分に近い人になってくるのがつらい。

お世話になった先輩、学友、同輩、この頃は年下の人も混じる。

年賀状だけのお付き合いになっている方々も多いので、驚きとショックがある。

中には、“(これを機に)今後の年賀状を控えさせていただく”という挨拶が付け加

えられていることもあり、残念に思う。日頃よく顔を合わせている人やほかの手段で

つながっている人ならいいが、年賀状だけで消息を把握している人の場合は、なんだか

寂しい。

いずれにせよ、名簿のリストから何人かを削除する作業は楽しいはずがなく、この時期

を最も嫌な時期と感じさせている最大の要因は、ここにあるのかもしれない。

                            2021.12.7