先の総選挙で野党第1党の立憲民主党が惨敗し、枝野代表が未練を残しながら辞任し
た。そして現在、新たな代表を選ぶための選挙戦が繰り広げられているわけだが、気の
毒なほど世間は冷めている。野党代表だから仕方がないとしても、支持層の拡大につな
がりそうな気配はまるでない。その原因は言うまでもなく候補者の存在感の薄さにあ
る。青いというのはその意味だ。例えるならば、“創業のワンマン社長がぽっくり逝っ
て、次を誰にしようかと慌てふためいている”といった様相である。
有力な候補者が不在の中、手を挙げたのは次の4候補、初めて見る顔ではないが、どの
ような人物かは正直よくわからない。立候補するには推薦人が20人以上で、衆・参合わ
せて140人しかいないのに推薦人だけで90人、残るはわずか50人である。端から票が割
れるのは見えていて、誰が本命なのか見当もつかないが、一応人物像を眺めてみよう。
・逢坂誠二(62)北海道、H17旧民主党の比例で初当選、「希望」には合流せず
・西村智奈美(54)新潟、H15初当選、夫は失言辞職の本多平直、希望不参加
・小川淳也(50)香川、H17比例初当選、「希望」に参加したが反発、元総務官僚
・泉健太(47)北海道、福山哲郎の秘書からH15 初当選、希望参加
以上の通りだが、旧民主党政権時代の”大物“たちが誰を押しているのかが分からないこ
ともあり、どうも人物像が描けない。
11.22に実施された「日本記者クラブ主催の討論会」の全編をユーチューブで見た印象で
言えば、“次の参議院選挙に向けた立憲民主党の宣伝”といった感じである。
4人が並んだところは、背丈や体格が似通っていて、まさに“団栗の背比べ”であったが、
あえて左(リベラル)から右(中道)にならべると、西村、逢坂、小川、泉の順にな
る。
4候補とも、日本の進むべき方向についてビジョンを示していないようにも感じるのだ
が、記者からの質問「目指す社会像は?」に対しては、こう答えた。
・逢坂:人への投資で「希望と安心のある社会」
・小川:対話型の政治が創る「持続可能な社会」
・泉 :公正な政治・行政で「普通の安心が得られる社会」
・西村:多様性を力に「理不尽を許さない社会」
思わず笑ってしまう。見方によれば皆同じで、いわゆる「成長戦略」がない。
根底には、「ある所から取ってきてないところへ配る」「先に配ることにより全体をか
さ上げする」という考え方があるのだろう。
“山を削って湖を埋める”みたいなやり方だ。それではみんなが泥沼にはまってしまう。
最も意外に思うのは、先の総選挙で惨敗したにもかかわらず、誰も枝野前代表や党執行
部の路線を“総括”しないことである。
枝野前代表は、“自分の立ち位置は「保守リベラル」であり、保守とは歴史と伝統を重
んじて急激な変化を求めない、積み重ねたものを大事に、ちょっとずつ世の中を良くし
ていく考え方”といっていた。しかし、本人の行動態様に添って意地悪く意訳すれば、
「戦前の歴史と伝統を拒否して戦後の偏った歴史のみを重んじ、そこから一切の変化
を求めない。世界環境の変化に適応することを拒み、ジリ貧の社会になることをよしと
する考え方」となる。
立憲民主党が真に政権政党を目指すならば、その代表には「この国を変えよう」、「政
治を変えよう」という前に、「この党を変えよう」という強い思いが是非とも必要だ。
その点、“ウィングを広げて立ち位置を崩してはいけない、相手の土俵には乗らない”な
どと言っている西村候補は失格である。
今後の野党共闘については、4人ともが国民民主は近いが維新は距離があると言ってい
る。それが維新は近いが共産は無理とならなければ、絶対に政権は取れない。維新に最
も近いのは泉候補のようだが、もし代表に選ばれたとしても、やがて憲法論議でも始ま
ればまたもや分裂の危機が待っている。
いずれにせよ30日には代表が選出される。しかし、誰が代表に選ばれても、立民の前途
は多難である。
2021.11.26