2024年のプロ野球オールスター・ゲームは、セ・パが仲良く星を分けたと言えば聞こえ
がいいが、両軍が放った安打数の合計が77、本塁打12本と球史に残る乱打戦であった。
これまでのレギュラーシーズンは、両リーグ合わせて3割打者がわずか3人、本塁打も17
本がトップという明らかな“投高打低”の状況であったため、“ボールが違う”とか何らか
の申し合わせがあったのでは”といった噂さえ流れる始末。打たれた投手がニタニタ笑
うような緊張感のないゲームが面白いはずはなく、私は二試合とも前半でチャンネルを
変えた。
何はともあれ、明日からは後半戦が始まる。後半戦といっても、すでに90試合ほどを消
化しているので残りは50数試合程度しかない。果たして頂点に立つのはどのチームか、
その予想の前にとりあえず現在の成績を見てみよう。
まずパリーグであるが、こちらはソフトバンクが2位に10ゲーム差をつけて首位を独走
中だ。これまでに10ゲーム以上をひっくり返した例がないわけではないが、選手層の厚
いソフトバンクが失速するというシナリオは描きにくく、他のチームはCSの短期決戦に
かけるしかない。3位までに入る可能性は西武以外の4チームが持っているが、最後にソ
フトバンクを倒す力はないだろう。
分からないのはセリーグである、7月に入って巨人に6連勝があり少しバラけてはきた
が、少し前まで上位4チームが1ゲームの中で”もぐらたたき“の様相を呈していた。
現在の状況と今後の予想に資するデータ(私見)を示すと次の通りとなる。
勝 負け 分け G差 総得点 総失点 得/失 総QS 先発勝利 失策
巨人 46 38 5 ― 261 228 1.145 53 35 29
広島 43 37 4 1 234 205 1.141 61 36 41
横浜 45 42 1 1.5 308 301 1.023 51 31 59
阪神 43 42 5 1 262 244 1.073 63 30 59
中日 38 46 6 4.5 211 284 0.742 53 26 44
ヤクルト 36 47 4 1.5 307 315 0.975 39 22 44
このとおり4位の阪神までがゲーム差3.5以内にひしめき合っており、1週間もあれば
ことごとく順位が入れ替わってもおかしくない。
一般に、詳細なデータとして示される数値として、チーム打率・チーム防御率・本塁
打数盗塁数などもあるが、それらはつまるところ得点ないし失点として表れるとして、
まず総得点を総失点で割った数値を出してみた。この数値が大きいほど勝ちも多いはず
だというわけだが、上位4チームの数値はかなり接近している。それだけ今後の予想も
難しいということになる。
次に「総QS」と「先発勝利」という欄がある。
QSとは先発投手が6回以上を3点(自責点)以内に抑えた場合を言い、勝利に結びつく数
字として、この回数が多い程良い先発投手とされる。この表ではローテーションを担う
主力投手だけでなく先発したすべての投手のQSを足し合わせた数値を示している。
「先発勝利」というのは、先発した投手に勝ち星が付いた試合数である。
もう一つ、「失策」数を加えたのは、失策はムードや試合のいわゆる“流れ”に大きな影
響を与えるからである。
以上、これらの要素を踏まえて、各チームの特徴と今後の展開を予想してみよう。
<巨人>
・得点/失点比率でわずかに広島を上回り1位、攻撃と防御のバランスがとれている。
・広島阪神に比べQS数が少ない。先発投手が4.5人(戸郷、山崎、菅野、グリフィン+井
上)で誰かが抜けるとガタガタになる恐れがある
・先発投手が勝利投手になる比率で他チームを圧倒している。つまり先行逃げ切り型の
スタイルが確立している。失策も最も少ない。
・ヘルナンデス(5月)若林(6月)に加え7月加入のモンテスと開幕後の補強に成功し
た。
・伝統的に1番バッターとクローザーに悩みを抱えていたが、丸と大勢でほぼ解消した
<広島>
・防御率の良い先発投手を6人揃え、クローザーも安定している。
・ところが、その先発陣に案外勝ち星がついていない。15試合に先発し防御率0.82の大
瀬良が4勝1敗、開幕投手でQS10の九里が4勝6敗、つまり攻撃のエンジンがかかるの
が遅く接戦となることが多い。
・全員野球で、波に乗れば大型の連勝もあり得るが、選手層が薄いので主力にけが人が
出れば一気に崩れる可能性がある。
・何故か中日に3勝9敗と大きく負け越している。後半戦もこの傾向が続けば優勝は難し
くなる。
<横浜>
・打線に破壊力があり得点力が最も高いが失点も多い。
・投手陣は、今永、バウアーの抜けた穴があまりにも大きく、東だけがたよりである。
・クローザーにも不安を抱えている。
・8勝0敗の東以外に貯金を殖やせる先発がいないので優勝は難しくCSの短期決戦にかけ
るしかない。
<阪神>
・昨シーズンの優勝メンバーがそのまま残っており、投手陣にも余裕があるにもかかわ
らず、才木投手以外のほぼ全員が不調である。
・とくに野手陣の個人成績は惨憺たるありさまで、各部門のランキング上位に阪神の名
前がない。
・実は阪神はこれまで連覇したことがなく、優勝の翌年は元気がないのが常なので、
それを考えると打つ手がない。
<中日>
・得点力があまりにも低く、Aクラス入りも難しい
・投手力はまずまずだが勝ち越しているのは高橋(宏)のみ
・広島に9勝3敗なので波乱要因にはなりうる
<ヤクルト>
・開幕投手のサイスニードが15試合に先発して防御利率4.56、1勝4敗という実績がす
べてを物語っている。他チームなら一度ローテーションを外すところだが、それもでき
ないのがこのチームの辛いところ。Aクラス入りは難しく投手陣の立て直しが必要だ。
私の分析は以上の通りだが、今シーズンの特徴としてQSが勝利に結びついていないとい
ことが挙げられる。これまでは、6回を3点以内に収めれば勝利の確率が高くなるからこ
そのクオリティー・スタートであったわけだが、それがどうもその程度ではクオリティ
ーとは言い難い状況だ。
技術の進歩とデータの活用で先発投手への負担は増々大きくなり、いわゆる分業化が進
んでいるため5回を1~2失点におさえることがより重要になっている。1試合に投入され
る投手の数は5,6人というのが普通になり、それに備えたピッチングスタッフが必要に
なるということだ。
では最後に、私の最終結果予想を披露させていただこう。
パリーグはソフトバンク、セリーグは巨人が優勝し、CSも同チームが制する。
日本シリーズは巨人が4勝2敗で勝ち日本一になる。根拠は、交流戦が巨人の2勝1敗で
あったからという単純な理由である。その3戦で戸郷、グリフィン、菅野が投げていな
いことも有利に働くと見る。
少々巨人びいきが過ぎるとお思いだろうが、それは仕方がない。私は巨人ファンなので
ある。公平な態度を装いながら巨人への応援メッセージを書いたのである。
ゆるされよ。
2024.07.25