樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

ペナントの行方(J-146)

2024年のプロ野球オールスター・ゲームは、セ・パが仲良く星を分けたと言えば聞こえ

がいいが、両軍が放った安打数の合計が77、本塁打12本と球史に残る乱打戦であった。

これまでのレギュラーシーズンは、両リーグ合わせて3割打者がわずか3人、本塁打も17

本がトップという明らかな“投高打低”の状況であったため、“ボールが違う”とか何らか

の申し合わせがあったのでは”といった噂さえ流れる始末。打たれた投手がニタニタ

うような緊張感のないゲームが面白いはずはなく、私は二試合とも前半でチャンネルを

変えた。

何はともあれ、明日からは後半戦が始まる。後半戦といっても、すでに90試合ほどを消

化しているので残りは50数試合程度しかない。果たして頂点に立つのはどのチームか、

その予想の前にとりあえず現在の成績を見てみよう。

 

まずパリーグであるが、こちらはソフトバンクが2位に10ゲーム差をつけて首位を独走

中だ。これまでに10ゲーム以上をひっくり返した例がないわけではないが、選手層の厚

ソフトバンクが失速するというシナリオは描きにくく、他のチームはCSの短期決戦に

かけるしかない。3位までに入る可能性は西武以外の4チームが持っているが、最後にソ

フトバンクを倒す力はないだろう。

分からないのはセリーグである、7月に入って巨人に6連勝があり少しバラけてはきた

が、少し前まで上位4チームが1ゲームの中で”もぐらたたき“の様相を呈していた。

現在の状況と今後の予想に資するデータ(私見)を示すと次の通りとなる。

 

     勝 負け 分け G差 総得点 総失点 得/失 総QS 先発勝利 失策

巨人   46 38   5      ―   261   228      1.145      53         35   29

広島   43 37      4       1       234         205      1.141      61         36   41

横浜        45    42      1        1.5       308         301      1.023      51         31   59

阪神     43    42      5         1         262         244      1.073      63         30   59

中日     38 46      6         4.5      211         284      0.742      53         26   44

ヤクルト     36 47   4       1.5   307    315      0.975      39      22           44

 

このとおり4位の阪神までがゲーム差3.5以内にひしめき合っており、1週間もあれば

ことごとく順位が入れ替わってもおかしくない。

一般に、詳細なデータとして示される数値として、チーム打率・チーム防御率・本塁

打数盗塁数などもあるが、それらはつまるところ得点ないし失点として表れるとして、

まず総得点を総失点で割った数値を出してみた。この数値が大きいほど勝ちも多いはず

だというわけだが、上位4チームの数値はかなり接近している。それだけ今後の予想も

難しいということになる。

次に「総QS」と「先発勝利」という欄がある。

QSとは先発投手が6回以上を3点(自責点)以内に抑えた場合を言い、勝利に結びつく数

字として、この回数が多い程良い先発投手とされる。この表ではローテーションを担う

主力投手だけでなく先発したすべての投手のQSを足し合わせた数値を示している。

「先発勝利」というのは、先発した投手に勝ち星が付いた試合数である。

もう一つ、「失策」数を加えたのは、失策はムードや試合のいわゆる“流れ”に大きな影

響を与えるからである。

以上、これらの要素を踏まえて、各チームの特徴と今後の展開を予想してみよう。

<巨人>

・得点/失点比率でわずかに広島を上回り1位、攻撃と防御のバランスがとれている。

・広島阪神に比べQS数が少ない。先発投手が4.5人(戸郷、山崎、菅野、グリフィン+井

 上)で誰かが抜けるとガタガタになる恐れがある

・先発投手が勝利投手になる比率で他チームを圧倒している。つまり先行逃げ切り型の

 スタイルが確立している。失策も最も少ない。

・ヘルナンデス(5月)若林(6月)に加え7月加入のモンテスと開幕後の補強に成功し 

 た。

・伝統的に1番バッターとクローザーに悩みを抱えていたが、丸と大勢でほぼ解消した

<広島>

防御率の良い先発投手を6人揃え、クローザーも安定している。

・ところが、その先発陣に案外勝ち星がついていない。15試合に先発し防御率0.82の大

 瀬良が4勝1敗、開幕投手でQS10の九里が4勝6敗、つまり攻撃のエンジンがかかるの

 が遅く接戦となることが多い。

・全員野球で、波に乗れば大型の連勝もあり得るが、選手層が薄いので主力にけが人が

 出れば一気に崩れる可能性がある。

・何故か中日に3勝9敗と大きく負け越している。後半戦もこの傾向が続けば優勝は難し

 くなる。

<横浜>

・打線に破壊力があり得点力が最も高いが失点も多い。

・投手陣は、今永、バウアーの抜けた穴があまりにも大きく、東だけがたよりである。

・クローザーにも不安を抱えている。

・8勝0敗の東以外に貯金を殖やせる先発がいないので優勝は難しくCSの短期決戦にかけ

 るしかない。

<阪神

・昨シーズンの優勝メンバーがそのまま残っており、投手陣にも余裕があるにもかかわ

 らず、才木投手以外のほぼ全員が不調である。

・とくに野手陣の個人成績は惨憺たるありさまで、各部門のランキング上位に阪神の名

 前がない。

・実は阪神はこれまで連覇したことがなく、優勝の翌年は元気がないのが常なので、

 それを考えると打つ手がない。

<中日>

・得点力があまりにも低く、Aクラス入りも難しい

投手力はまずまずだが勝ち越しているのは高橋(宏)のみ

・広島に9勝3敗なので波乱要因にはなりうる

<ヤクルト>

開幕投手のサイスニードが15試合に先発して防御利率4.56、1勝4敗という実績がす

べてを物語っている。他チームなら一度ローテーションを外すところだが、それもでき

ないのがこのチームの辛いところ。Aクラス入りは難しく投手陣の立て直しが必要だ。

 

私の分析は以上の通りだが、今シーズンの特徴としてQSが勝利に結びついていないとい

ことが挙げられる。これまでは、6回を3点以内に収めれば勝利の確率が高くなるからこ

そのクオリティー・スタートであったわけだが、それがどうもその程度ではクオリティ

ーとは言い難い状況だ。

技術の進歩とデータの活用で先発投手への負担は増々大きくなり、いわゆる分業化が進

んでいるため5回を1~2失点におさえることがより重要になっている。1試合に投入され

る投手の数は5,6人というのが普通になり、それに備えたピッチングスタッフが必要に

なるということだ。

 

では最後に、私の最終結果予想を披露させていただこう。

パリーグソフトバンクセリーグは巨人が優勝し、CSも同チームが制する。

日本シリーズは巨人が4勝2敗で勝ち日本一になる。根拠は、交流戦が巨人の2勝1敗で

あったからという単純な理由である。その3戦で戸郷、グリフィン、菅野が投げていな

いことも有利に働くと見る。

少々巨人びいきが過ぎるとお思いだろうが、それは仕方がない。私は巨人ファンなので

ある。公平な態度を装いながら巨人への応援メッセージを書いたのである。

ゆるされよ。

                           2024.07.25