樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

時は今(J-84)

総選挙、終わってみれば絶対安定多数の261議席を獲得した自民の圧勝である。

逆に野党連合は、”政権選択選挙“を合言葉に統一候補を立てながら議席を減らしたのだ

から惨敗というほかはない。なのに、枝野代表も志位委員長も”一定の効果があった“

という。

ということは、どちらも“もっと悪い結果”を覚悟していて、それよりはましだったと言

っているのだろうか。だとすれば、”政権交代“などと大風呂敷を広げずに、”与党の絶対

安定多数阻止”を訴えた方が好感を持たれただろうにとも思う。

“野党は負けたということ“と断言したのは、大躍進を遂げた維新の松井代表だけなのだ

から笑うしかない。

流石に枝野代表は不承不承辞任する羽目になったが、志位委員長は正しい道なので責任

を取る必要はないと平然としている。その不撓不屈の精神(?)には感心するが、立民

の役員交代とともに”立憲共産党“も解消される可能性が高い。確かに、統一候補を立て

小選挙区では接戦に持ち込めたところも多かったが、立民の比例票はむしろ減少して

いる。共産党の固定票は、立民にとっていわば”独饅頭“なのである。

 

それにしても、メディアの直前予想は何だったのか。外すにしても程度がひどすぎる。

騙されてばかりで、常日頃文句を言いながらも、またもや新聞を信じた自分が情けな

い。

とは言いながら、自民がかなりのピンチに立たされていたのも事実である。では何が自

民の危機を救ったのだろうか・・・。

その第一は菅前総理だと言えそうだ。最強の権力“解散権”を放棄し、しかも新型コロナ

対策に専念するとして、自身は総裁選に出馬しなかった。そのおかげかどうかは分から

ないが、コロナ感染は急速に縮小し、雰囲気は大きく変化した。実際、菅さんの応援演

説は大人気だったようだ。

その第二は、国民の良識である。ときあたかも、中・露艦隊が日本列島を周回するとい

う事態が生じる中で、いくら何でも共産と手を組む党に一票を投じるわけにはいかない

と判断した国民は多かったに違いない。元文科省次官の前川喜平氏は“日本の有権者

かなり愚か”と悔し紛れの暴言を吐いたが、国民にはそんな言葉に惑わされない良識が

あるということだ。そんな人物が官僚のトップになることを防げない以上、やはり政治

家を選ぶことは極めて重要な国民の権利である。

 

話は変わるが、選挙の結果が明白になっても、おかしな理屈が幅を利かせている。

その一つは、“勝者なし”という論調(屁理屈)だ。

毎日新聞の中田卓二政治部長は、“勝者なしという民意”と題する記事を書いた。

その理由は、与野党ともに議席数を減らしたからだというのだが、勝負のターゲットは

自己記録の更新ではない。前回より多いか少ないか、接戦かどうかは関係ないのだ。

過半数獲得を目標とした与党が、政権交代を目標とした野党に圧勝したのである。

もし、前回比で勝敗を論じるならば、”勝者なしという民意“ではなく、”維新大勝利“と

毎日は書かねばならなかった。維新は大坂の19の選挙区のうち候補を立てた15区で全勝

し、残りの4区は公明が議席を獲得したので、自民、立民ともに小選挙区での当選者な

しという異常事態が起きた。また、沖縄では自民2、共産1、社民1という小さいながら

も注目すべき変化が起きている。メディアは、大外れの予想に対する釈明もせず、注目

すべき変化にも言及しない。敗者は、実はメディアではなかったかと言いたくもなる。

 

もう一つは、“自民党を支持する人は国民の4人に一人しかいない”という屁理屈だ。

それを新聞赤旗はこのように書く。

小選挙区で自民の得票率は50.1%であったが、絶対得票率(有権者総数に対する比率)

は26.3%でしかない。さらに、民意を最も正確に反映する比例での得票率は34.7%で絶

対得票率は18.9%しかない。“

だからどうだというのか。4人に3人が野党を支持しているということにはなるまい。

投票に行かない人は、概ね次のような人たちだ。

・関心がない。誰が当選してもかまわない

・投票に行かなくてもどうせ与党が勝つ

・与党も気に入らないが野党はもっとダメ

つまり、基本的に現状肯定派であって、与党容認派なのである。自治体の選挙がそれを

よく表している。

長期政権の弊害をなくすためには、2大政党体制が望ましいかもしれないが、そのため

には少なくとも国家観が一致していなくてはならない。それでこそ、建設的な議論が交

わされ、政治に緊張感がうまれる。しかしそうなったときも、”民意“というのはつまる

ところ多数決となるのが民主主義のシステムだ。

 

なにはともあれ、維新の躍進により「改憲への道」が開けた。

大きな障害物(福島瑞穂、辻本清美)が取り除かれたのが何とも心地よい。

それも一つの民意の現れである。

安倍総理の下では議論したくないと言っていた人たちもその理由を失った。

岸田総理よ、“時は今”だ。

                            2021.11.8