9.17自民党総裁選が告示され、河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の4氏が立候補
した。出馬を取りやめコロナ対策に専念するとした菅総理のおかげでもあるまいが、こ
のところコロナ感染は急速に縮小しつつあり、世は総裁選一色の気配となってきた。
18日、さんざん脅しをかけられた台風が事もなく通り過ぎていったので馴染みの床屋に
行ったのだが、「誰になりますかねえ」と早速総裁選の話題を振ってくる。
いつの時代も床屋はホットな情報のたまり場で、世論調査のミニ版ともいえる存在だ。
床屋の主人は、意外にもやや高市びいきであったが、最終的には、
「決選投票になれば、高市票が岸田に流れて岸田有利かもね」
といったところに落ち着いた。
ところが一夜明けて19日になると、河野人気はさらに上昇し岸田人気はむしろ低下して
いる様相である。どうやら4人が並んで討論などした時の迫力、歯切れの良さ、説得力
といったところが影響しているようだ。岸田氏は政策として「国民への丁寧な説明」を
上げながらそこが巧みでないようにも見える。もしかすると一発で決まるかもしれない
し、決戦投票そのものが、岸田ではなく河野vs高市の構図となるのかもしれない。
いずれにせよ、新総裁が決まるまでは、メディアと国民の関心は自民党に向けられ、こ
の間いくら野党が「政治の空白を作るな、国会を開け」と繰り返しても、それは”遠吠
え“にしか映らない。つまり次に予定している総選挙に対しては、間違いなく自民有利
な状況が出来上がっている。結果次第によっては、これを機に今後も総裁選⇒総選挙と
いうパターンが出来上がるかもしれない。
そんな中で、(おや?!)と目に留まったのが“立民枝野代表への単独インタビュー”
という記事である。その記事を載せたのが“西日本新聞”であるところが何とも寂しく、
いささか同情を禁じ得ない部分もあるのだが、とりあえず枝野代表の言い分をまとめて
みよう。
・結党一年で100人を超える最大野党を作ることができた。
・首相を退陣に追い込むという成果を上げた。
・過半数を占める候補を擁立し、全員当選を目指す。
・(低空飛行がつづく)党支持率の局面打開策はない。
・奇をてらうことはしない、無責任なことは言わない、大風呂敷は広げない。
・有権者は安定と安心を求めている。自分の考えは保守的リベラルである。
誠に申し訳ないが、支離滅裂にして矛盾だらけ、まな板に載せればズタズタにされそう
な主張だと言わざるを得ない。
まず、最後に出てくる”保守的リベラル“について考えてみよう。
インサイダー編集長の高野孟氏が“あり得ない”とこき下ろしている部分だ。
しかし、「保守」も「リベラル」も哲学的な定義があるのかどうかは知らないが、私の
中ではかなり幅広い概念である。だから重なり合う部分があってもおかしくはないとも
思う。ここは結局”水掛け論“にしかならないような気がしている。
「立憲民主党」という党名は戦前の2大政党「立憲民政党」「立憲政友会」に似ている
ことも考慮すると、枝野氏の心の中では「保守」とリベラルが矛盾することなく共存し
ているのであろう。つまりこの部分だけは、私の心は枝野氏に”同情的“ではある。
しかし後の部分は“どれもこれも”という感じだ。
“結党一年で最大野党を作った”事実はその通りかもしれないが、かつて政権を握った民
主党が無残にも解体し、その後に生まれた希望(の党)も崩れ落ち、バラバラになって
流れているところに杭を立ててからめとっただけの話ではないのか。そう威張れたもの
ではない。
首相を退陣に追い込んだのが手柄(成果)だとすれば、選挙に負けた場合の責任が問わ
れかねない。“菅さんとなら勝負できる”と踏んでいた面々も少なくないはずだからであ
る。そのあたりは、東国原英夫氏も自身のツイッターで皮肉っている。
“次は政権選択選挙になる。全員当選させ過半数を取る”という宣言は、勇ましいが空し
い。これを大風呂敷と言わずして何と言おうかである。
致命的なのは“低迷する支持率を上げる策はない”と言い切ったことである。
その前後を踏まえて推測すると、一つには旧民主党時代の失敗がトラウマになっている
のであろう。“有権者は安定と安心を求めている、当たり前のことを当たり前にやる”と
いうのなら、その当たり前を国民に示す必要がある。「維新」、「国民」と組むならま
だしも、「共産」「社民」「れいわ」と手を繋いで見せても政権はとれるはずがない。
枝野氏が本当に”保守的リベラル“であり首相を目指すというのなら、最も近い道は、仲
間を引き連れて自民党に入党し、そして枝野派を形成するかあるいは二階派あたりを乗
っ取るかの二つしかない。
そんな気は毛頭なさそうなので、枝野氏の宣言はどうしても本気度がうかがえない。
だから、“今後とも私はクレーマーとして遠吠えを続ける”と言っているようにしか聞こ
えないのである。
2021.9.19