樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

何用あって中国がCPTPPに(J-80)

想定外は自然現象の得意技だが、人間社会も負けず劣らず思いがけないことが多い。

裏返してみればそれは、どちらもよく分かっていないことの証でもある。

毎日が“驚き”の連続で満たされるのは、高度情報社会の宿命でもある。情報の価値は

インパクトの強さに比例する傾向があるからである。

 

直近の例で言えば、9.20のBTSの国連本部でのパフォーマンスにはちょっと驚いた。

(こんなこと考えるのはあの男しか・・)と思ったら、やはりそのとおりで、あちら

こちで“爪はじき”を食わされている文在寅大統領が、人気アイドルを使って

(もっとウエルカムな世界を・・)と泣きを入れたものだと分かった。

世界がさほど盛り上がらなかったのは底がみえているからにちがいない。

続いて、韓国在住の黒田勝弘氏が文春オンラインに載せた記事にも驚かされた。

その記事は、韓国で「慰安婦をたたえる日」(8.14)に合わせて発刊された

「赤い水曜日」という本の紹介で、表題の意味は「嘘で固められた反日慰安婦運動」

と読める。著者は金柄憲(52)という在野の研究家で、これまでも反日活動を批判して

きた人物らしい。

その内容は、“「慰安婦被害者法」で定義されるような被害者は存在しない、もし加害

者がいるとすれば、それは「貧困」であり、責任は自分たちにある”という超過激な

(まともな?)主張のようだ。そのような本が出版されたのも驚きだが、その著者が告

発もされず“炎上”もしていないことにもっと驚いた。正論過ぎて無視するしか手がない

のか、それとも、活動家たちの様々な不祥事が明らかになったこともあって、”慰安婦

疲れ“が生じているのだろうか。

 

最も驚かされたのは、オーストラリアがフランスと結んだ潜水艦の共同開発を一方的に

破棄し、英米と組んで通常型原子力潜水艦の開発に着手すると発表したことである。

かつて日本が「そうりゅう型」をベースにした案で受注が有力視されたあのプロジェク

トだ。

フランスは激怒し、米・豪の駐在大使を召還するという最大級の反発を示している。

米英豪は、同時にAUKUS(オーカス)という新たな安全保障の枠組みを発表し、その最

初の事業がこの潜水艦共同開発であると表明した。真相はよくわからないが、アメリ

が提供する武器装備品の機密がフランス側に漏れるのを嫌ったという説や、フランス側

が予算の倍増と納期の延長を要求したことなどの説がある。

しかし最大の理由は、悪化する対中関係を意識しての“より高性能への要求”が勝ったの

ではないだろうか。そんなもっともらしい理屈ではなく、商売が先で、AUKUSは後付け

の理由に過ぎないという見方もある。

いずれにせよ、地図上にオーカスとクアッドの国々をプロットして線で結べば、対中国

包囲網がほぼ完成する。

当然、中国の出方が気になるところだが、「CPTPPへの加入申請」の発表はその戦略の

一つであると考えてもおかしくはない。

これまでも中国はCPTPPへの参加意欲を示していたので、“驚き”度はさほどでもないの

だが、”気になる“度は極めて高い。

しかし大手メディアは、これにあまり関心を示さず論評を避けているかに見える。ざっ

と眺めたところでは、週刊誌も同様だ。ただ、読売だけが社説でとりあげ、“中国は現

状において参加資格がない”と断じ、“英国の早期加盟と米国の復帰に向けた努力を続け

よ”と提案している。

中国の動きに敏感に反応したのは台湾である。CPTPP加盟国や周辺の島しょ国には台湾

のシンパが多く、中国が先に加入すれば台湾の立場は増々危うくなること必定だ。

中国の本当の狙いは台湾問題だとも読める。

もう一つ中国の加入申請に慌てた国がある、韓国だ。CPTPPへの加入は締約国すべての

同意が必要なので、韓国はどうせ日本がOKを出さないと諦めて、“米・中のどちらもい

ないグループに加入しても意味がない”などとうそぶいていたが、中国が申請したとた

ん、このどさくさに紛れて潜り込もうと画策している。

 

自分は排他主義ではないが、中国・韓国の加入には迷うことなく反対する。

その理由は、両国とも「法治国家」として認められないからである。

民主国家は法治国家でなければならない。法治国家では、国家権力は「法」によって与

えられる。しかし中国では「法」は「権力」の道具に過ぎない。つまり、中国共産党

(のトップ)が法を駆使して人民を制御・支配するいわば「党治国家」だ。

一方韓国は、「情治国家」と言われるが如く、法も権力も「情」に支配されている。

複数の国が軍事同盟や経済協定を結ぶときには”約束事“が必要だ。まずルールを作り

それを遵守することでグループの結束は保たれる。そして、「共通のルール」は

「個のルール」に優先する。「国際条約」は「国内法」を凌駕するのである。

ところが、中国では「党」が、韓国では「情」が最上位にあり、しかもそれがしばしば

変動する。そういう国はやがてグループを破壊する。そういう国とは二国間でやるしか

ないのである。

それにつけても、中国はしたたかだ。目標に対しては常に圧力をかけ続け、時には変異

したかに見せて油断を誘い、相手の免疫力が低下したスキに乗じて侵入を図る。

中国にしてみれば、今回CPTPPに門前払いされてもダメージはない。

最初から蹴られるのは織り込み済みで、その場合は、“自由貿易を閉ざしているのは

どっちだ”と訴え、印象操作に利用しようと考えているのかもしれない。

どうころんでも”我に利あり”と踏んでいるのだ。

 

日本は散々渋った挙句、最後にTPPに参加した。そして、米国が脱退した後の11か国を

新たにCPTPPとして再構築したときには中心となった。だから、責任も重い。

中・韓の加入については、二国に対して改善要求をはっきり示し、その条件が整わない

限り加入は出来ないことを加盟国にも理解させる必要がある。

BTSにほだされて安易に“ウェルカム”すれば、日本も情治国家に成り下がる。

                             2021.9.23

                            2021.9.23