樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

中国の近未来(J-30)

 

日本の将来を考えるとき、気になるのはやはり中国の“これから”である。

ほとんどの専門家が、“中国のGDPは2020年代にアメリカを抜く”と予想

している。人口が4倍もあるのだから驚くには値しないが、この勢いは

どこまで・・・というより、勢いに任せた横暴なふるまいはさらに・・・?

と、世界が“懸念”している。

 

その昔、日下公人が「戦争が嫌いな人のための戦争学」という本を出した。

その本で一番印象に残っているのは、“15歳から25歳の若者が15%を超えると

その国は戦争を始める・・昭和15年の時点でそれに該当する国は、日・独・伊

3国であり・・・現在(20002年)この条件に近いのは中国で、10年以内に

戦争を始める可能性が高い・・この人口論の例外は戦後の日本と韓国で、

高度経済成長がその捌け口になった“ という部分であった。

予想に反して中国は戦争を始めなかったが、それは日・韓同様、高度経済成長

がストレスを吸収したと考えれば、納得できる。

そこでこの際、「人口は嘘をつかない」という説を信じ、中国の建国以来の流れ

と近未来を、人口ベースで考えてみることにした。

 

毛沢東率いる中共が誕生した1949年、中国の総人口は約54000万人であった。

そこから毎年1500万人以上のペースで人口が膨張した。

これに危機感を抱いたのが鄧小平で、「一人っ子政策」を掲げ、1982年には

その政策を憲法にまで格上げしてしまった。

それでも人口増は続き「一人っ子政策」も長く継続されることとなった。

かくして、「421家庭」(祖父母4人父母2人子供一人)が増加する中で、

高度経済成長が続いた結果、様々な歪がうまれ、庶民の意識も変化した。

一例をあげれば、「男女比率の差」がある。一人しか子供が持てないなら、

多くの夫婦が「跡取り息子」を求める。思い通りにはならないはずだが、

中国のことだから”対策“は常にある。

その結果、男女の比率がおかしくなってしまった。あぶれた男たちを

剰男(シェナン)と呼ぶらしいが、剰男の数がなんと3000万人にもなって

しまったのである。

 

将来の少子高齢化にようやく不安を感じた習近平は、長く続いた路線を変更し、

「二人っ子政策」へと舵を切った。

ところが、注目の2017年、二人目の子供は大幅に増えたのだが、全体の出生数は

減少してしまった。

“時すでに遅し”である。

庶民の意識は既に変わってしまっていた。

一人っ子たちは、概して“わがまま”で、離婚するカップルが増え、

離婚しなくても、子供を持たず生活を楽しむDINKS派が増加した。

また、教育費の増大や、同時に親を扶養しなければならないといった

経済的な理由もあった。世の中が変わっていたのである。

 

一方、隣には人口を増やし続けている大国インドがある。

おそらく2024年ごろ、中国とインドの人口は逆転する。間もなくのことだ。

中国の人口は今後も少しずつ増加するが、2030年ごろにはピークに達し、

急速に少子高齢化が進むことが確定的だ。

そして2049年、建国100周年を祝う国民のうちの約5億人が老人たちで、

そのうちの約2億人は要介護だと予想されている。

ちなみに、2100年、中国が崩壊せずに存在しているとすると、中国の人口は

10億、インドは約15億程度になるらしい。

 

貧富の差が激しく、介護保険制度もない中国の急速な少子高齢化は、日本よりも

遥かに深刻である。老人ばかりでは戦争もできまい。

今回の武漢ウィルスが、人工的に作られたのではないかという疑念がくすぶっている

根底には、高齢者だけを殺すウィルスを作ろうとしていたのではないか、あの国なら

やりかねないぞ、という妄想も混じっているのかもしれない。

 

冗談はさておき、最も懸念されるのは、昔から相性が悪いインドとの関係だ。

南シナ海よりもインド洋の緊張が高まる可能性が目の前にある。

 

近藤大介氏が「未来の中国年表」でこんなエピソードを紹介している。

2015ダボス会議でアジア各国の指導者たちは日本のことを「老いた金メダリスト」

と呼んでいた。その心は、「あの人(国)昔はすごかったんだよなあ」という気持ちで、少なからずショックを受けた“というのである。

これを真似て、いつの日か中国のことを「老いた銀メダリスト」と呼んでみたい気が

するのだが、それは夢物語に終わるのであろうか。

                         202008.24