例年なら、そろそろマジック点灯かという時期になっても、プロ野球ペナントレースの
行方がなかなか見えてこない。
9.15現在、セ・リーグは2.5ゲーム差の中に3チームがしのぎを削り、ロッテが頭一つ抜
け出した感があるパ・リーグも、6ゲーム差の中に4チームがひしめき合っている。
この状態は、おそらく10月の初めまで続くのではないかと予想されるが、もしかする
と、今年はコロナとオリンピックの所為で“珍現象”が生まれる可能性もある。
まず、セ・リーグの順位表を眺めてみよう。
勝 負 分 差 残
阪神 61 46 5 ― 31
ヤクルト 52 42 13 2.5 36
巨人 54 44 15 0 30
データからすれば、貯金15の阪神が貯金10のヤクルト・巨人より断然有利のようにも見
えるが、それほど単純な話ではない。
阪神がこの位置にいるのは交流戦とヤクルト戦で星を稼ぎ、その他でも苦手チームがな
いからである。しかしながら、対ヤクルト戦で言えば、4~6月に8勝2敗2分けと圧倒し
た影響が残っているということで、7月以降はむしろ分が悪いというのが実情だ。
加えて、Bクラスの戦力が整ってきたことも懸念材料である。DeNAは、打撃部門で8人
しかいない3割打者の4人を占める強力打線が相変わらず好調だし、中日は防御率5位ま
でに3人の先発投手を擁し、あなどれない。
となると、阪神の残りの31ゲームは5割程度の星勘定になるかもしれない。仮にその結
果を、15勝15敗1分けと仮定したとき、最終結果は76勝61敗6分けで勝率0.5547となる。
ここで、ヤクルト、巨人がこの勝率をぎりぎりで上回る条件を考えてみよう。
両チームの阪神との大きな違いは引き分け数だ。残り試合もこれまでと同様の引き分け
試合があると仮定すると、阪神は1であるのに対してヤクルト・巨人は4となり、次表
のような皮算用も現実味を帯びてくる。
(仮の最終結果)
勝 負 分 差 勝率 順位
阪神 76 61 6 ― 0.5547 ③
ヤクルト 70 56 17 0.5 0.5489 ②
巨人 69 55 19 0 0.5564 ①
つまり、0.5ゲーム差で阪神が逃げ切りかと思いきや、勝率の差で3位ということが
起こりえるのである。
なぜこのようなことが起きるかと言えば、それは引き分けゲームをノーカウントとして
いるからだ。現実的ではないが、極端なことを云えば、1勝142分けのチームは勝率1.00
で優勝となる。MLBなら引き分けがないからこんなことにはならない。何らかの理由で
ドローになれば再試合、優勝は単純に勝ち数で決まる。
かと言って、私はその方がいいと言っているのではない。引き分け試合は観客のためで
もあるし、引き分けをめぐる攻防もそれはそれで興味深い。
改善策は簡単だ。サッカーと同じく引き分けをカウントすればよいのである。つまり、
引き分けを0.5勝とすればいいだけの話だ。先の例で計算すれば、阪神は79勝となり、
78.5勝のヤクルト巨人をかわしてめでたく優勝となる。
珍現象の可能性はもう一つある。
リーグ優勝の後にはクライマックス・シリーズが待っているわけだが、パリーグでは
現在の4位に甘んじている常勝軍団のソフトバンクが3位の楽天を捉えてCSに進出してく
る公算がかなり高い。そうなるとソフトバンクがCSを制する可能性も十分にある。
セ・リーグは優勝チームがそのままCSも制することになりそうな気がしているが、3チ
ームの力は拮抗しており、3位のチームが勝ち上がる可能性もないわけではない。
つまり、日本シリーズは3位同士の戦いになる可能性があるということで、そうなると
やはり珍現象というべきであろう。こちらも極端なことを云えば、勝率5割以下のチー
ム同士が日本シリーズを戦うことさえありうる。なんだか阿保らしくもあり、そんな可
能性を秘めたCSの存在そのものに、私は疑問を抱いている。
2021.9.16