前回のブログは、政党要件を満たしている既存政党についてしか述べていない。
新聞やTVが概ね対等に扱ってくれる、いわば表の参院選だ。
しかし、今回選挙がいつもと違うように感じられるのは、従来は「諸派」として「泡
沫」扱いされてきた政治団体が裏(SNS)で熱い戦いを繰り広げているからである。
若者の多くはSNSから情報をインプットしており、時代はこれらの政治団体を「泡沫」
として無視するわけにはいかなくなっている。
大手メディアが無視を決め込んでいる中で、毎日新聞は、6月22日の「風知草」(特別
編集委員の山田孝男のコラム)で、そういった状況を“「参政党」現象”と題してこのよ
うな言い回しで触れた。
“知る人ぞ知る、知らぬ人は名さえ聞いたことがない政治団体について書く。(中略)
過日、「サンセイトーってどうなんです?」と知人に聞かれ、「えっ?」と聞き返し
た。 知人は49歳で私は70歳。「ご存じないとはショックです」と知人は言い、私も驚
いた・・(略)”
実は私も「参政党」を知らなかったのだが、この記事を読んで一度これらの政治団体に
ついて頭を整理してみようという気になった。中にはちょっと気になる団体もある。
先ずは目新しいところから・・・
参政党:
元吹田市議の神谷宗幣(44)を中心に、“投票先がないなら自分たちで作ろう”と5人のメ
ンバーで2021年に立ち上げた。“誰かがやってくる時代は終わった”としてDIYを理念と
している。今回の選挙では、10の柱と3つの重点政策を掲げ、45選挙区のすべてと比例
区に5人を立てた。その中には元衆院議員で風見鶏のような松田学や中部大客員教授の
武田邦彦先生もいてなかなか強力な布陣だ。
重点政策は、・教育・先人の知恵を生かしたSDGs・国の守り の3つだが、総じてグロ
ーバリズムへの抵抗感がみてとれる。
ごぼうの党:
会員制高級サロンなどを経営する奥野卓志(48)が立ち上げた。23日、都庁前で行われ
た初の街頭演説では、法被姿に天狗の面に白髪のかつらをつけて登場し、「この選挙を
祭りとして楽しめるような運動をしていく」「政治を花火のようにしたい」と訴えた。
20分程度のスピーチの後は、若者たちの「よさこいソーラン」風のダンスとなった。
お面にダンスはかつてオウムがやったパフォーマンスで印象が悪いが、有名芸能人やア
スリートたちの応援もあって、SNS上ではかなりの勢いがある。
“一番大切なものは「笑顔」であり、コロナ対策はその笑顔を奪った”と訴えるところと
合わせると、コロナが生んだ政治団体と見ることもできる。
ただ、一部には、立憲と参政の票を割らせようとする”自民の別動隊“であると指摘する
者もいる。
以下はお馴染みの団体である。
くにもり:
元々は「日本の敵とは徹底的に戦う集団=国守衆」という集団があり、「我らこそが自
民が立党宣言をした時代の魂を受け継ぐ嫡流である」と宣言していた。その政治家分野
が「新党くにもり」であるという。今回選挙には比例に党代表の本間奈々を立てている
が、彼女は早大から自治省に入り、その後わが春日井市の副市長を務め、札幌市長選に
も立候補したことが在るという元気な女性だ。
宗教法人「幸福の科学」(総裁:大川隆法)を母体とするもはやお馴染みの団体だ。
勢いは下降気味であり、昨年には国政選挙から撤退する意思を表明したが、今回また党
首を比例に立てている。
日本第一:
ヘイトスピーチや橋下徹市長とのバトルで知られた桜井誠の団体であるが、未だに国・
地方共に議員はゼロ、自身も中核派青年との援助交際スキャンダルで元気はない。
新風:
魚谷哲夫(74)が1995年に設立した。
「あらゆるレイシズムに反対する」といいながら、「韓国との国交断絶」を主張するな
ど矛盾するところもあるが、一貫しているのは「戦後体制への不満」である。2009年ご
ろをピークに党員も減少し続けている。
以上を総括してみると、これらの政治団体の中に学生運動から派生した団体はいない、
全体的に反グローバリズムの傾向が見られ、右か左で言えば自民よりさらに右に立って
いるようにも見える。このことは自民がそれほど右に偏ってはいないことの証明である
ともいえよう。
ただ一つ、「参政党」だけは他とは違うところがある。
「自尊史観の教育」とか、「日本版SDGs」とか、「外国勢力が関与できない体制」だ
とかナショナリズム的な香りがプンプンしていても、演説を聞けば「れいわ」や「N
党」よりも穏やかで、国際試合で日本を応援するときと同じような気分にさせられる。
私は今回この党が1議席と政党要件の2%を獲得するのではないかとみているが、政治
家本来の務めはリーダーシップにあると考えるので、本気でメッセンジャー的な姿勢を
貫くつもりだとすれば、少々物足りない。しかし、存在意義はありそうで、今後伸びて
いくポテンシャルがある。
SNS上の熱い戦いに比べ、いまのところ表の戦いは冷ややかである。
一足も二足も早い梅雨明けと猛暑の所為だけでもあるまいが・・・。
であれば、自ずから限界がある。