樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

言いたい放題(J-77)

9月3日、前日まで続投に意欲を示していた菅総理が、総裁選不出馬を表明した。

その理由が、“新型コロナ対策に専念したいから”だという。誰が信じられようか。

“来週にも記者会見する”と言ったまま週半ばを過ぎたところを見ると、もはやその気が

ないのかもしれない。世の関心は”その後”に移っている。

肝心の与党自民党は、なんだかほっとしたような雰囲気なのに、メディアや野党は大騒

ぎ、様々な憶測が飛び交っている。

それらがあまりにも”言いたい放題“なので、当爺怪説の方も言いたい放題に彼らの

”言い分“を遠山の金さんに倣ってとくと吟味してみたい。

-黙って聞いてりゃいい気になりやがって-の気分だ。

 

先ずはメディアである。

メディアは、菅総理の不出馬というより不出馬の可能性さえ予測していなかった。

5日連続の小泉環境大臣との会合まで追跡していながら、何が話し合われていたのかを

追求することもなく、想像することさえできなかったのである。

そうなると、これまで報じてきた総理の人事刷新・総裁選前の解散総選挙作戦というの

も、単なる作り話に過ぎなかったのかと疑いたくもなる。

不意打ちを食らった“腹いせ”か、メディアの総理に対する論評は情け容赦ない。

毎日新聞・社説のタイトルは「菅首相が辞意表明・独善と楽観が招いた末路」である。

そして、コロナ対策、オリパラ、学術会議候補者の任命拒否などすべてが失敗だと断じた。

しかし、首相は辞意を表明したのではない。次期は”お呼びでない“ことを悟ってのいわ

ば”潔い決断”だ。トランプの悪あがきと比べれば上等だ。

 

コロナ対策は、基本的に“できるだけ感染のピークを後ろにずらし、その間に医療体制

を整えワクチンを待つ”という前総理の戦略を引き継いだものだ。そしてその作戦は半

ば成功していたのである。それが、ここにきて自宅療養中に死亡しているのが発見され

たり、陽性の妊婦が入院できずに嬰児が死亡するといった情けなくも悲惨な状況になっ

たのは、ひとえに医療体制が整わなかったからだ。その原因がどこにあるのか私には分

からないが、日本の医療システムそのものに問題があることは想像できる。週刊朝日

よると、あの尾身さんが理事長を務めるJCHO(地域医療機能推進機構)傘下の都内五

つの公的病院でコロナ用に設けられている183床の31%が空床になっているとい

う。人手不足なのかもしれないが、何とかしようとする動きはあるのだろうか。それで

もベッド当たりの補助金だけは、ちゃっかり貰っているらしい。コロナ対応の現場の苦

闘は理解できるが、それ以外の医療現場はどうだろう。私の感じではどこの病院も以前

よりがらんとしているようにも見える。

医療関係者の、“コロナ患者以外の患者さんもいるので”という言葉をしばしば耳にして

きたが、実はそれに該当するのは、ごく一部の人たちに過ぎないのではないか。

現役の医師が現場を離れ、毎日テレビに出演し医療崩壊だと訴えても説得力はない。

外国からは、廊下にベッドが並んでいたり、順番待ちの患者が詰めかけていたりといっ

た映像が多々送られてくるが、日本のそれは一人の患者に数人のスタッフが世話をして

いるような映像が多い。それでもって人手が足りないから自宅療養でというのはあんま

りだ。メディアは鈍感なのかそれとも“グル”なのか。

 

次はいわゆる識者と呼ばれる学者先生や評論家である。

“官僚そして国民にとって、菅政権以上に悪い政権は、今後生まれないだろうと思いた

い”と言ったのは元文部官僚の寺脇研氏だ。

京都大教授の落合恵美子先生はこんな調子だ。

菅首相からは何を目標にしているのかということを全く聞けない一年だった。それは

菅首相が単に口下手なのではなく、そもそも理念やビジョンがなかったからだと思う。

(中略)高度成長期以降、日本は「アジアでトップ」と思われてきたが、コロナ対策で

も、ジェンダーに関する姿勢でも、とてもトップとは言えない。この実態を明確にした

ことが菅政権の唯一の成果ではないかと思う“

・・・・(なんと品のない言い方であることよ)・・と思う。

週刊現代では、同誌の企画に悪乗りした5人の評論家たちが、総裁候補の人物評価をし

ている。

決断力、政策力、共感力、統率力、大局観という5つの要素をそれぞれ10点満点で採点

し、正五角形上にプロットして囲まれた図形の面積を見るというよくある手法である。

その結果を1位から順に示すと、1.石破茂(26点)2.河野太郎(23)2.高市

苗(23)4.菅義偉(21)5.岸田文雄(19)6.野田聖子(18)

この企画が不出馬表明以前だから菅さんも入っている。

改めていうが、これは50点満点における評価である。彼らはいったい何を言おうとして

いるのか・・・どれもこれも“団栗の背比べ”で全員落第と言っているのである。

・・・・(よくもそれほど上から目線になれるものよ)・・と思う。

 

最後は野党の面々である。

菅さんの不出馬で当てが外れたのは岸田さんかもしれないが、野党はそれどころではな

く、慌てふためいている様子が見て取れる。

昨日まで“失政の責任をとれ”と喚いていたのが一転“投げ出しだ、政治の空白を作るな、

最後まで(コロナが収まるまで)やれ”と励ましともとれる口調に変わった。

何のことはない、菅政権を相手に選挙戦をやりたかったホンネが見え見えなのだ。

立憲の枝野代表は、“誰が総裁になろうと正々堂々と戦う”などと言いながら統一候補を

立てる作戦だ。連立を組むつもりはないと明言する共産党選挙協力をしてどこが正々

堂々なのか。

“コロナ対策は検査と水際対策を充実させ・・”などと季節外れなことも云う。今は出口

戦略をどうするかだ。日頃、クレームをつけることしか頭にないから政策などとっさに

は出しようがない。そう言えば、なんだか人相までクレーマーぽくなってきたような気

もする・・こちらもだんだん品がなくなってきたので、この辺で終わりにしよう。

最後に、次期総裁だが、“永田町で一番話がつまらない男”と呼ばれる岸田さんに期待す

る気持ちがある。当たり前のことを当たり前にやるのが保守の本流で、保守本流を自負

する宏池会が勢いを取り戻してほしいとも思うからである。

                             2021.9.9