樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

わがコロナ騒動(J-66)

1週間前、軽い風邪の症状があり熱を測ってみたら37.4度ある。

例によって葛根湯を飲んでそのままベッドに入ったのだが、熱はどんどん上がって38.7

度になった。

あまり高熱にならない自分としては、記憶にない数値である。しかし、体の節々が痛い

他は咳や鼻汁などの症状がなくなんだかおかしい・・・。

「まさか?!」と思うより早く家内の方が騒ぎ出した。

「あなたの風邪はそんなに熱が出ないし、食欲がなくなったりしない。」よって、

「極めて怪しい」と断を下し、さっそくあちこち消毒を始める始末となった。そして、

「うろうろしないで自分の部屋へ、そして直ちに病院に相談せよ」と私に命じた。

こんなとき、私はいつも“もう少し様子をみてからにしよう”と考えるのだが、彼女は行

動が早い。よく言えば、有事の女である。

その剣幕に押され、翌日の診察を約してその晩は「ロキソニン」を服用して早々に床に

就いた。

目覚めると大量の汗をかいており、体の痛みもなく気分は悪くなかった。

熱は37.0度まで下がっていた。

“治ったじゃん”と思ったのだが、家内は納得してくれそうにないので団地に隣接する総

合病院に電話した。

「あの~、ちょっと熱があるのでご相談を・・」といいかけるとすぐに

「担当に回します」となり、慣れた感じの看護師に代わった。

彼女は最初に診察券番号を聞き、次いでこれまでの経緯や現在の症状などをてきぱきと

質問した。そして最後に「何分後に来られますか」と問い、到着したら「自家用車で身

障者用駐車場に止めて電話してください」と指示をした。

その通りにして電話をすると、全身ガード状態の看護師がやってきて、私の鼻から検体

を採取した。

「ひどいことするでしょう。ごめんなさいね」と言いながら、次々に3本も細長い棒を

差し込み、ひっかきまわし、まるでその行為を楽しむが如く鮮やかにその作業を終え、

「では1時間ほどかかりますのでこのままお待ちください、もしトイレに行きたくなっ

たら電話してください勝手に車を離れないように」と念を押して去っていった。

車の中で、携帯「dマガジン」を読んでいるとちょうど1時間過ぎたころ同じ看護師が

やってきて検査結果を告げた。

B5の検査結果報告書には、三つの(―)表示があった。その二つはインフルエンザであ

り、もう一つが新型コロナの検査結果であった。

PCRはそんなに早く検査結果が出ないと思っていたので、「抗原検査ですか?」と聞

くと、「いえ、簡易的なPCR 検査です」という答えであった。

そして、有難いことに薬の方もその看護士が薬局まで出向いてもらってきてくれた。

支払いは元気になられたあとでということで結局車からは一歩も出ることなくすべてが 

完了した。なかなかうまい方法を考えたものである。

簡易的PCR検査の正体がはっきりしないが、NEAR法と呼ばれるもので、精度は従来法

とあまり変わらないものらしい。とはいえ、

「検査結果は完ぺきではないので、容体に変化があれば電話するように」との予想通り

の指示であった。

薬は、平凡な抗生物質と喉の薬と沈痛解熱剤5日分で合計260円と安かった。

沈痛解熱剤は「ロキソニン」はウィルス性疾患の場合副作用が出ることが在るので今回

処方した「カロナール」にした方がいいとの注意を受けた。

それから5日、酒も口にできる(少々弱くなった感がるのは抗生剤のせいか)ようにな

り、どうやら無事に済みそうな気配となった。

さて、今回の「コロナ感染」を疑った短い期間、私が何を感じたのかを振り返ってみよう。

「死にたくない」という気持ちよりも、もし感染していたら私の周辺への影響はどうな

るだろうという心配の方が強かったと思う。入院しようが死亡しようが、それを望みは

しないがまあしょうがない。しかし、家族を始め付き合いのある人たちへの迷惑を想像

すると耐えがたいものがある。指定感染症の本当の怖さはそこにあるのかもしれないと

も思う。

テレビでは、「誰にも感染の可能性があるのだから感染者を差別してはいけない」と

無責任なコメンテーターが言う。しかし、それは甘い。

指定感染症に指定するということは、「差別します」という宣言でもあるのだ。

そこをはっきりと示すことが、“若者も重症化する可能性がある” よりも効き目があり

そうにも思う。

もう一つ思ったことは、“そろそろ終活を始めるべきだな”ということなのだが、具体的

な行動にはまだ踏み切れずにいる。

                      2021.5.27