樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

ワンマンショータイム(J-62)

投げて 打って 走って、おまけに小技まで決めて・・・

大谷翔平が絵にかいたようなワンマンショーを演じて、世界の野球ファンを魅了した。

ショウヘイ・オオタニが二度目のリアル二刀流で出場すると予告されていた4月26日の

レンジャーズ戦は、試合前から全米の注目を集めていたが、彼が示したパフォーマンス

はファンの期待以上のものであった。

1回表、1アウト走者なしで迎えた第1打席は四球を選んで出塁し、トラウトのヒットで

2進すると、次のウォルシュの右前打で生還し1得点をあげる。ライトは強肩の選手で

あったが、まずはここで大谷の俊足が生きた。

その裏、初回のマウンドに立った大谷の膝には、このゲームの主役が彼であるかの如

く、ホームに滑り込んだ際の泥がついていた。

しかしその初回、投手大谷の出来は”悲惨“としか言いようがなかった。

1死後、ボテボテの当たりが内野安打になると、四球、ホームランと続いてあっという

間の3失点である。さらに四球二つに暴投が加わり、犠牲フライでもう1点、結局この回

に29球を要して4失点、前回同様勝利投手の権利が得られる5回は投げきれまいと思わせ

る乱調であった。

ところが、誰もが抱いたその重苦しい懸念に希望の光が差し込んでくる。

2回表、2死1,2塁で迎えた第2打席、大谷は痛烈な2点2塁打を放ち、さらに自身も後続

のヒットで生還して4-4の振出しに戻るのである。

そこからの投手大谷はまるで別人のように蘇り、三振の山を積み上げてゆく。

2番手の相手投手、韓国から移籍したばかりのヤンも好投して膠着状態が続く。

そして6回表、先頭の大谷がやってのけたのは何とセーフティーバントだ。

これに驚かなかったのは、おそらく本人だけに違いない。奇襲攻撃は見事成功し、

そして彼は三度ホームベースを踏むことになる。

ここで、またもや右手中指あたりに問題が生じたらしく、彼の姿はベンチから消えた

のだが、彼の熱気は残り、エンジェルスはこの試合を9-4で勝利した。

結局大谷は、投げては5回3安打4失点9奪三振の75球で勝利投手となり、打っては2安打

1四球2打点3得点の大活躍であった。

MLBはいろいろと古いデータを提供するのが好きなようだが、今回も次のようなデータ

を引っ張り出してきている。

・100年ぶり:ホームラントップの選手が先発(1921.6.3 ベーブルース以来)

・50年ぶり:投手の2安打3得点(1971.5.1 ジム・ペリー以来)

・60年ぶり:投手の2安打3得点9奪三振(1961.6.11 ルイス・ティアント以来)

 といった具合だ。

大谷翔平は、これからも多くの歴史を掘り起こし、そして書き換えてゆくに違いない。

MLB取材歴24年目のベテラン記者ジェフ・フレッチャーは、シーズン前に大谷の今期

成績を予想して、打者としては打率2割6分、16本塁打、65打点、投手としては、8勝

防御率4.24 くらいとしたが、この試合後、”修正の必要がある“とコメントした。

また、CBSスポーツのアクシサ記者は、134年間出ていない150/150の大記録(150

奪三振、150塁打)が生まれる可能性があると期待を寄せている。

いずれにせよ、多くの関係者が“彼の伝説はまだ始まったばかり”だとみている。

大谷の凄さは専門家であればあるほどわかるものらしい。

何のつながりもなくても、なんだか誇らしく思うのは私だけではあるまい。

                          2021.4.28