コロナによる足止めのおかげで、有り余るほどの時間があり、その記事をじっくり
読ませてもらったのだが、どうもしっくりこない。どこかズレている感じがして
ならないのである。
まず一つ目は、憲法改正に関するものだ。
5月3日、毎日新聞が発表した憲法改正の賛否を問う世論調査の結果は、
改正に賛成:48%、反対:31%
というもので、2020.4の安倍内閣当時の結果(賛成:36%、反対:46%)に対して
大きく賛成側に比重が移ったことを示したものであった。
しかしこの間、自民党が提案している4つの項目(自衛隊、緊急事態、選挙法、教育)
に関する主張は何も変わってはいない。
ならば、この民意の変化をもたらした要因はどこにあるのだろうか。
その答えを当の毎日に期待するのは読者として至極当然である。
ところが、どういうわけか、毎日が8,9面全体を使って取り上げたのは、「同性婚」
「夫婦別姓」の問題であった。
しかし、そのテーマは、憲法の下位にある民法などの規定が「憲法違反」に当たるか
どうかの問題であって、基本的に憲法改正とは関係がない。
変えたければ変えればいい話である。
毎日新聞は、憲法改正の議論から民意をそらそうとしているのであろうか。
そもそも、この世論調査を実施した「社会調査センター」とはどういう組織なのか。
調べてみると、かなり問題があると言わざるを得ない。
この会社は、2020年4月埼玉大学内に設立された会社であり、社長は埼玉大学理事兼副
学長の重原氏であるが、調査研究部長及び次長は毎日新聞の関係者であり、実質的に
毎日新聞の子会社のような存在だ。
それだけではない。さらに問題なのは調査結果に明らかな“偏り”が見られることだ。
例えば、この会社が調査した菅内閣の支持/不支持率をみてみると、他の5社(朝日、
読売、共同、日経、NHK)平均に比べ10%以上、支持するは低く、支持しないは高い
数値となっている。つまり、“桁外れ”に政権批判が強い傾向を示しているのである。
何らかの意図なり処理なりが疑われても仕方がない結果だ。
毎日新聞は原則すべての記事に記者の氏名が添えられる。私が毎日を購読する第一の
理由がそれだ。
しかし、いかにも第三者的な調査機関を装った、いわば姑息な、らしくない世論調査の
方法はいかがなものか。
早かれ遅かれ、いずれ厳しい目が向けられることになるだろう。
もう一つは、「オリ・パラ開催の是非に関する全国知事調査」の結果である。
この調査は4月20日全国の知事にアンケート調査票を送り28日までにすべてを回収した
結果を発表したもので、5月4日の1面トップと21面の大半を使って紹介された。
どうやら、4月中に実施された報道各社の世論調査で「中止・延期」がほぼ6割程度あっ
たことを踏まえ、更にこの傾向を助長して政権にダメージを与える狙いがあったのかも
しれないが、もしそうだとすれば空振りに終わったと言わざるを得ない。
アンケートの選択肢は次の4つであった。
① 感染状況にかかわらず開催すべきだ
② 感染状況次第で中止・延期すべきだ
③ すぐに中止・延期にすべきだ
④ わからない
この中で、①③を選択したものはおらず、②を選んだ知事が9人、④が5知事という結果
であったらしい。つまり、それ以外の33知事は無回答(選択肢を選ばない)であったと
いうこいとになる。
これは、アンケート調査としては完全な失敗である。本来なら設問を替えるなりして
やり直すべきであろう。それを恥ずかしげもなく記事にする神経が情けない。
オリ・パラ開催は、日本が試されているといってもいい歴史的大事業である。
実現するには何が必要か、どのような条件を満たす必要があるのか、メディアの視点が
これまで一度もそこに向けられなかったのは、残念としか言いようがない。
2021.5.5