7月24日に開始されたオリンピック競技は今日で8日目、16日間の前半を終えた。
ここまでの日本選手の活躍は目覚ましく、これまでに獲得した金メダル17は、歴代最
多の16を超え中・米とトップ争いを繰り広げてきた。ここからの戦いもそう甘くはな
いが、メダル総数がこれまでの最多前回リオの41個を上回ることは確実、前回東京29個
からのの倍増もほぼ確実だ。その数値はおそらく世界第3位となり、日本にふさわしい
ポジションである。
大会の詳細日程が発表されたのは7月20日ごろであったが、実はその時気づいたことが
あった。それは、このスケジュールが、日本人選手のメダル獲得が毎日途切れることな
く続くことを狙ったかのようなものになっているということであった。さらにいえば、
“ひょっとすると「金」の連鎖もありうる”という期待さえも抱かせる見事なプランとな
っていた。
そして、始まってみればそれが現実となっていたのだが、8日目にしてまさかの結果で
「金」の鎖が切れた。
まさかとは、柔道の団体の敗戦である。厳しいようだが団体だけは鉄板だと思っていた
ので少々がっかりだ。闘志満々のフランスに対して、日本側には変な”ゆとり”が感じら
れた。油断があったのではないだろうか。
がっかりついでに言えば、8~10日目の主役になってくれるはずだったバドミントンが
期待を裏切る結果に終わった。各種目でランキング上位につけ、複数の代表を出して、
中国の卓球のごとく国内選手どうしの決勝もありうるといった周囲の予想と、混合以外
は準決勝にも進めないという現実のギャップは何処から生まれたのか、不運だけでは済
まされない反省材料がありそうだ。
前半を振り返り、特に印象に残った選手をとりあげ記憶に残しておきたい。
私の中でのMVPは競泳の個人メドレーで400,200の2冠を達成した大橋悠依選手だ。
競泳女子で2冠は日本初の快挙なのだが、競技直前の彼女に対する期待値は、“200か400
のどちらかでメダルが取れれば・・”という程度であったと思う。「金」二つは本人も
驚く予想外の結果であった。彼女のピークは3年前くらいで、現在25歳の彼女はそろそ
ろ”下り坂“と見られていたのである。スレンダーな彼女が筋骨隆々たる外国人選手の中
に入ると”かわいそう“に見えるほどで、”最後のご褒美にせめて銅くらいは・・”と感じ
たのは私だけではないだろう。
ところがそれはとんでもない誤解だ。
泳ぎ始めると彼女の姿はすぐに見つけられる。そこだけ水しぶきが少ないからだ。
カワウソやアザラシなど、泳ぎの達者な動物は水しぶきを上げない。彼らから見れば、
人間の泳ぎは何とも無様に違いない。そう考えれば大橋選手の泳ぎはおそらく”理にか
なっている”のである。だからこそ長くトップの座に居られるのであろう。
殊勲賞は柔道である。男女7階級と団体合わせて15のうち9個の「金」をさらったのだか
らまさに圧勝である。各級一人の代表にかかるプレッシャーは並大抵のものではなかっ
たであろうが、選手たちはそれを見事にはねのけて期待に応えた。
敢闘賞はフェンシング男子エペ団体だ。比較的歴史が浅い日本フェンシングの、しかも
フルーレでなく一足遅れのエペ団体がヨーロッパの強豪を打ち砕いた意義は大きい。
今後への好影響が期待される。
技能賞は卓球の伊藤美誠選手。水谷隼選手と組んだ混合ダブルスでは中国ペアを破って
優勝し、個人の銅も日本女子初のメダルである。これから始まる団体戦で、金は無理と
しても銀を獲れば金銀銅が揃うことになる。混合D準々決勝の対ドイツ戦で6-10の相手
マッチポイントからの大逆転勝利は語り継がれる彼女の勲章だ。
今日から8月、コロナ感染が拡大する中後半の厚い戦いが繰り広げられるわけだが、人
気の野球・サッカーも決勝トーナメントに駒を進めており、レスリング・空手・ボクシ
ングなどのメダル有望種目も控えている。
途切れた「金」の鎖は、ふたたび新たなつながりを見せてくれるだろう。
あと1週間、今のところ台風も発生していない。なんとかコロナを抑えて無事に競技が
進行し、選手たちが存分に活躍されることを願う。
2021.8.1