樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

人生は途中で終わるもの(Y-1)

          

ラグビー・ワールドカップ
渋野日向子の全英優勝で湧いた令和元年
最後に衝撃的なニュースが伝えられました
それは アフガニスタン
長年にわたり医療と農業の支援活動をしていた中村哲さんが

武装グループに襲撃され死亡するという悲報でした


中村さんはこれまで何度も日本メディアの取材を受けていて
「政府側/反政府側どちらの勢力も我々を守ってくれるので心配はない」とか
憲法9条が僕らを守ってくれている」といった発言をされていました
しかし、2008年
日本人スタッフ伊藤和也さんを殺害した武装グループが
NGOの活動は知っているが、それはスパイ活動だ」と言明したとき
中村さんは自分以外の日本人スタッフ全員を帰国させました
だから内心では、自分も決して安全ではないと覚悟していたに違いありません
私はこのニュースを聞いたとき
なぜかスティーブ・ジョブズのあの有名なスピーチの一節を思い出しました
それは 彼が若いころに出会ったある名言に関するエピソードです


“If you live each day as if it was your last, someday you’ll most certainly be right.”
(毎日これが最後の日かもしれないと思って生きれば、いつか本当にそうなる)


それ以来彼は、
“「もし今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていることをするだろうか」
と自問自答しながら生きてきた“ というのです


同じような言葉があります
“明日死ぬかのように生き、永遠に生きるかのように学ぶ”
愛知専門尼僧堂堂長という肩書を持つ青山俊蕫という尼さん住職の言葉です


どうでしょうか


たしかに立派だなあとは思います
しかし残念ながら私には これらの言葉がしっくりこないのです
今日明日にも死ぬと思えば
私はきっと何もする気がなくなるに違いありません
しかし私は中村哲さんの死を聞いて
これら二つの言葉の本当の意味が分かったような気がしています
それは高名な禅僧 松原泰道師が残した


“人生とは途中で終わるもの”


だということです
人生はよく山登りやマラソンに例えられますが
実は 人生には 頂上もゴールもありません
アインシュタインは次の言葉を残しました


Life is like riding a bicycle. To keep your balance you must keep moving.
(人生とは自転車のようなものだ。倒れないためには走らねばならない)

ひたすら走り続けてゴールを見ることなく終わる
それが人生なのだ と教えているのでしょう

私もそんな気がします