樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

多読は多毒か(Y-6)

近年 “本離れ” あるいは “活字離れ” が進行しているそうで、

ときどき、出版界の嘆き節が聞こえてきます。

統計資料を覗いてみると 確かにその通りなのですが、

さほど騒ぐほどでもないような気もします。

大きく発刊点数を下げているのは、

週刊誌・月刊誌、そして文庫本です。

私自身 週刊誌はスマホで読んでいますし、

文庫本はAmazonなどで中古を買うことが多いので、

この統計資料には一応納得がいきます。

しかし、減ったとはいえ、

毎年7万点以上、7億冊以上の新刊が発刊され、

国会図書館には、

何と4300万冊以上の蔵書があるというのが現状です。

江戸時代に、塙保己一という超人が、

古代からの文献を集大成した「群書類従」が

1273種666冊ですから、

現代の出版部数を昔の人が聞けば、きっと目を回すでしょう。

正直言って、それほどの需要はないと思うのですが、

おそらく 供給サイドの事情によるものだろうと思います。

 

少し前に、

芦田愛菜は年間300冊以上の本を読むらしい”

という話が広く伝わりました。

これが世の母親たちに少なからぬ影響を与えたらしく、

児童書などはなかなかの健闘ぶりなのですが、

そもそも、子供たちに大量の本を読ませることは

“いいこと” なのでしょうか。

明治以降の知識人に多大な影響を与えたといわれる

アルトゥル・ショーペンハウアーは、

“悪書を読まないことが良書を読むための条件である”

と言い残しています。

読書に関する金言・名言を並べてみると、

“できるだけ多くではなく できるだけ少なく読みたまえ”

                  (ヘンリー・ミラー

“本を読むのに何よりも大切なことは ゆっくり読むということである”

                  (エミイル・ファゲ)

“繰り返し読む本をどれだけ持っているかであなたの読書人生は決まる”

                     (渡部昇一

といったように、多読を勧めるものは見当たりません。

これらをひとつにまとめるならば、

“良書だけをゆっくり繰り返して読みなさい”

と云うことになるでしょうか。

 

「速読法」を伝授するといった内容の本もありますが、

速読は、録画の早送りみたいなもので、

お目当ての部分をサーチするときくらいにしか

役に立たないような気がします。

 

私自身は 自慢できるほどの読書家ではありませんが、

まあまあの本好きには参考になるかもしれませんので、

一応 私の読書ルールをご紹介します。

  1.  本棚に背表紙が見えるような状態で並べられる冊数を維持する。

    そのため1,2年毎に数10冊程度を処分する。

 2.複数の本を同時並行的に読む

    一つは年間のテーマ(宗教とかある作家とか、今年は古典)

    あとは異なるジャンルのものを3~5冊同時に読む。

 3.汚して読む 

    アンダーラインや書き込みを入れる。

    繰り返し読むとき効果がある。

 4 買って読む

    よほど高価でないかぎり基本的に本は買って読む。

    (繰り返し読む、汚して読むので必然的にそうなる)

    図書館を利用するのは 読みたい本を探すとき、

 5.面白くなければ途中でやめる

    無理して読もうとすると本が嫌いになるので、

    案外これが大切。但し、しばらくするとまた読みたくなる

    ものもあるので、2,3年は本棚に飾っておく。

 

 最後に、「繰り返し読む本」としておすすめの本をひとつ・・・

  「知的生活の方法」(渡辺昇一、講談社現代新書

 

 気障ったらしい名前が恥ずかしければネットでどうぞ・・・。