樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

「失敗を恐れるな」は言い過ぎだ(Y-5)

 

この樗木の遺言では、

私自身が影響を受けた名言をいくつか取り上げていくつもりですが、

名言との出会いって、 

どこか男女の出会いに似ていると思いませんか?

その名言に初めて出会った瞬間、

ハートを鷲づかみにされたような気持ちになることもあれば、

何度か親しんでいるうちに だんだん気に入って、

座右の銘として生涯の伴侶になることもあります。

それとは逆に、

相手が評判の“人気者”であるにもかかわらず、

ちっとも心に響かないといったケースもあります。

どうやら名言・格言にはTPOがありそうです。

 

さて 桜の咲くころの人気者といえば・・・

“失敗を恐れるな”

という言葉がまず浮かんできます。

この言葉は卒業式や入社式のいわば“常連”です。

しかしこの言葉、 

“ちょっと無責任すぎる” とは思いませんか?

私は、この言葉を引用して話す人たちに、

“自分の子供にもそう言えますか?”

と問うてみたい気がするのです。

 

社会に出たばかりの人たちの ほとんどは、

失敗を恐れようが恐れまいが 、

まあ、“失敗だらけ” というのが相場だろうと思います。

そして常識的には、

失敗を恐れなかった人ほど より多く失敗するでしょうし、

もし すばらしく “出来のいい” 人がいたとしても、 

失敗に無縁ということには ならないでしょう。

要するに 失敗は誰にでも起きることで、

いわば “人間の証明” のようなものかもしれません。

 

“失敗を恐れるな” に近い格言はいくつかあって、

この言葉が誰のオリジナルなのか 私には分かっていません。

本田宗一郎さんの言葉だという説が有力ですが、 

彼が残した言葉は、

“失敗を恐れるよりも失敗を恐れて何もしないことの方を恐れなさい”

であって 微妙なニュアンスが感じられます。 つまり

「チャレンジ精神を失うな 行動せよ」と言っているわけで、

「ギャンブル大いに結構」と言っているわけではありません。

 

全英優勝の快挙を成し遂げた渋野日向子選手の活躍を見て、

“彼女は失敗を恐れない思いっきりの良さがある”

と評する人をよく見かけますが、

彼女の場合 それだけの実力と自信を備えているので、

本人はさほど冒険しているつもりはないのではないでしょうか。

それでも時々ミスをしますが、

彼女はそこで崩れない・・・つまり

彼女の最大の武器は、 

“失敗にくじけない鋼のメンタル” なのです。

その証拠は とびぬけた“バウンスバック率”に現れています。

 

本当に大切なのは、

心に留めておいてほしいことは、

失敗を恐れないことではなく、

失敗をしないこと(チャレンジをせずに)でもなく、

失敗してもあきらめないこと、くじけないこと なのです。

だから 桜の季節 後輩たちを励ます時には、 是非とも

“失敗を恐れるな” ではなく

“失敗にくじけるな”

という言葉に置き換えてほしいと思います。

 

最後に 失敗を最もポジティブに捉えていた人ともいうべき

エジソンの言葉を紹介します。

“I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work.”

(失敗などしてはおらぬ、うまくゆかぬ方法を1万通り

 見つけてやったのじゃ)

 

これって まだ成功にたどり着いていないときのセリフでしょう?

鋼のメンタルどころか、ダイヤモンドのメンタルですね・・・

ほんとに・・・。