樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

言論に異議あり(J-114)

 

7月8日、安倍元総理が奈良市参院選の応援演説中、暴漢の凶弾を浴び死亡した。

“最も安全な国”ともいわれる日本で起きたこの事件は、“信じがたい惨劇“として世界に

衝撃を与えたが、ある意味”日本らしさ“をも漂わせている。

その一つは、犯行に使用された銃が”手製“であったこと、もう一つは”警備の甘さ”

である。

事件の概要は、メディアやSNSを通じてまたたくまに全国に拡散したが、政治家や識者

の発言はまるでハンコでも押したかのように、「言論を暴力で封じようとする暴挙」、

「民主主義に対する挑戦」といったコメントに集約されている。

あたかも二本の”金太郎あめ”のようなこの現象は、不気味でもある。

同時に、その発言内容や報道姿勢には首をかしげざるを得ない部分も少なくない。

 

まず第一に、現行逮捕された犯人についての発言である。

この男が元海上自衛官であったという事実は早い段階で報じられ、その経歴が20年前か

らの3年間であることもわかっていた。しかし、言論界のこの経歴に関する反応は明ら

かに過剰である。自衛官と手製の銃をこじつけたり、5.15,2.26事件をもちだしたり、

ほとんど“言いがかり”とも言うべき無茶苦茶な論法だ。

犯人が使用した銃の詳細は明らかでないが、見た眼には火縄銃のような原始的な構造の

ようである。実は小学生のころ、仲間の間で手製の銃をつくることが流行り、私も制作

したことが在る。銃身にはコウモリ傘の柄などを利用し、火薬には紙火薬をバラシて使

った。銃身に小さな穴をあけてそこに少し火薬を乗せ、ゴムを動力にした撃鉄でその部

分を叩くという仕組みだった。たいていは弾を込めずに音と炎だけで喜んでいたが、鉛

を溶かして弾をつくった奴もいた。まもなく大人たちに見つかって禁止されてしまった

が、かなりの威力があった。原始的な銃なら子供でも作れるばかりか、そもそも、海上

自衛官はそれほど銃に詳しくない。

皆が知りたいのは遠い昔の話ではなくて、犯人の最近の状況だ。

「何故メディアは“元”を強調する? 今何やってるかを先に教えて」とサッカーの本田

がツイートしている。その通りである。

 

次に最も気になる犯人の動機についてである。

犯人は「安倍氏の政治信条に恨みはない。特定の宗教団体に恨みがあり、初めはその団

体を狙っていたが、難しいのでその団体に深いつながりがある安倍氏を狙った」と告白

している。そこに至るまでに誤解や思い込みがあったかどうかは分からないが、おそら

くその発言に嘘はない。思想的な理由であるならそれを隠すことは目的に反するからで

ある。だから、思想的背景があったわけではない。

では、正義感に基づく懲罰・制裁の意味があったのかどうか・・・つまり、

“母親がある宗教に嵌まりひどいことになった。犠牲者は他にもいる。だからこの宗教

団体には懲罰を与えなければならない・・”と犯人が考えたかどうかということだが、

もしそうなら犯人ははっきりとその団体名を口にしているはずである。しかしその部分

は報じられない。

ここに問題がある。犯人が口にしようがしまいが、警察もメディアもおそらくその団体

名は分かっている。それをあえて公表しないのはなぜか・・・。

振り返れば、北朝鮮による拉致犯罪もオウム真理教のケースも、初期においては同様の

扱いが続いた。

SNSを探ってみると、その宗教団体は「統一教会」ではないかと推定されている。

あの「霊感商法」や「合同結婚式」で悪名を馳せた「世界基督教統一神霊教会」であ

る。教祖は死亡し現在は「世界平和統一家庭連合」と名を変えているが、おそらくそう

であろう。

遠からずこの情報は拡散すると思われるが、大手メディアはこの時を待っている。

先走れば、嫌がらせや業務妨害、訴訟などの厄介ごとに見舞われかねないからだ。

世間に名前が知られればあとは思うままに叩くことができる。この団体をターゲットに

した追求は、さらに政治と宗教界の関係にまで踏み込んでゆくのかもしれない。

そのときには、かつて自分たちが「暴力による言論封殺」、「民主主義への挑戦」など

と騒いでいたことはすっかり忘れ、自身が”エンマ大王”に変身する。

詳しくは書かないが、言論界は暴力による言論弾圧を激しく否定しながら、自分たち自

身が“言論による言論封じ”をしばしば行っていることに気づいていない、若しくは気づ

かぬふりをしている。

”ペンは剣よりも強し“ ペンは時に集団となって、剣よりも人を傷つける。

                          2022.07.11