樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

コロナは中国より出でて中国に還る(J-103)

 

過去最大の大波となったオミクロン株による第6波は、ピークを過ぎて下降局面にはあ

るものの、未だ新規感染者が1日5万人程度の“高止まり”の状況にある。

そんな中で政府は、「蔓延防止等重点措置」を予てのプラン通り21日をもって全面解除

とすることにした。

その決定に異を唱えたのは立憲民主党共産党のみで、メディアや医師会などは案外反

発していない。至極当然だとも思うのだが、その背景にはワクチンと変異株の弱毒化が

ある。ここにきて、新型コロナへの恐怖感は著しく希薄化しているのである。

世界もまた同様だ。というより、世界は一足先にその域に到達している。

人口約570万のデンマークは、一日の感染者数が過去最大の5万人を超えた2月1日の時点

でほぼすべての規制を撤廃した。累計感染者数が国民全体の5割を超え、もはや規制に

意味がなくなると同時に、恐怖感も消えてしまったようだ。国民の多くは、“みんな一

度は罹るけど、ワクチン打ってるから大丈夫”といった雰囲気である。

オーストリアもまた3月5日にほぼ制限を撤廃した。その代わりに、この国ではワクチン

接種を義務付ける法案が成立し、15日から施行されている。

ロシアのウクライナ侵攻もあってか、このところコロナの話題は激減した。しかし、

2年を超えるウィルスとの戦いの中で各種のデータも蓄積され、いろんなことが分かっ

てきた。今こそ我が日本も、将来に備えた学習が必要だと思う。

 

感染拡大初期において危機的状況に陥ったイタリア・スペインや、その後感染者が急拡

大したアメリカ・ブラジルなどの国々は、今は比較的落ち着いた状況にある。一方で、

当初は優等生と言われていた韓国・ベトナム・オーストラリアといったところが、今は

感染拡大の真っただ中にある。中でも、最悪の事態となっているのが韓国だ。

韓国は2020年初め、新型コロナが”武漢肺炎“とも呼ばれていた時期に、いちはやく感染

が拡大した。しかしその後、“K防疫”と自称する対策が効いたのか一旦は沈静化に成功し

た。累計感染者数が100万人を超えたのは今年の2月6日で、そこまでは、日本の3分の1

以下に抑えられていた。ところがそこから2週間で200万を超え、その後も7日、5日、3

日、3日、3日毎に100万人ずつ積み上げて、遂に3月16日には62万人という最大値を記

録し、わずか2日間で100万人に達して収まる気配がない。累計感染者数は825万人を超

え、あっという間に日本を抜き去ってしまった。

次は、憲法によって国民に移動の自由が保障され、とくに強い感染防止対策がとられな

かったスェーデンの状況を見てみよう。

スェーデンは、欧州各国がロックダウンなどを実施する中で、日本同様の“お願い”

ベースに終始し、半ば無策の“集団免疫戦略”だと一時は非難された。それを裏付けるよ

うに初期段階での死者数も多かった。そこには、介護の現場に移民出身のパート勤務者

が多いという事情や、集中治療を必要とする場合、必ずしも高齢者が優先されないとい

った理由もあったとされる。しかし、それらの問題はあったにせよ、現時点における

データからすれば、EU諸国と比べて死亡率が高いとは言えない。

ここで主要な国と特徴的な国のデータを眺めてみよう。

(データの根拠は、「日経新聞の新型コロナ感染マップ3.16」である。

 また、人口比の数値は、人口を感染者数あるいは死亡数で割った値、

 つまり「何人に一人が感染又は死亡しているか」を表している)

 

            人口   感染者数  人口比  死亡数   人口比

    日本     1億2686万  591.4万   21.5   26,625   4,765

 

    米国    3億2906   7963.2    4.1   968,329    340

   イタリア                   6055           1356.3           4.5           157,314            385

      オーストリア         892             328.4            2.7             15,289           583

A       英国                  6753           2005.9         3.4           163,833           412

          仏        6513           2394.4            2.7           141,640           460

             独        8351           1802.8           4.6            126,424           660

          デンマーク        577             302.5           1.9                 5305         1,087 

 

          ベトナム       9734               682.5          14.2            41,607         2,340

B        韓国       5122              825.6            6.2             11,481        4,461

          豪州       2569              376.3            6.8               5,662        4,537

 

       スウェーデン       1003               247.2           4.1              17,937          559

C       中国    14億3932                78.6        1831                9483     151778

         (香港)        740         66.2    11.1          4,847        1,526

 

この表のAグループはアメリカとEU の国々で、感染拡大の時期や波の様子など途中の

状況には大きな差があっても、データは次第に接近して来るということがよくわかる。

デンマークは国民の50%以上が感染しているが、まだ完全な集団免疫が形成されたとも言え

ず、コロナとの戦いが容易には終わらないことを示している。

Bグループは、初期段階で“優等生”と言われた国々である。日本もこのグループに入る。

このグループは、オミクロン株に変異してからの感染拡大が激しく、Aグループのデー

タを追いかけている状況にある。但し、死亡数は著しく抑制されている。

Cグループは、独特の特徴を示している二つの国である。

スウェーデンは、前述の通り、他のEU諸国と異なる対策を実施してきたが、最後にはEU諸国

の平均に近いデータとなっている。つまり、日本的に言えば“人流抑制”はさほど効果が

ないことを示しているようにも見える。

中国は、はっきりいってよくわからない。極端な都市ロックダウンが効いているのは確

かだが、ここまで感染拡大を防げているのは不思議でもある。ただ、よりデータが本当

らしく思われる香港の状況を見ると、その実態は現時点で世界最悪かもしれない。いく

つもの異なるレポートが存在するが、中には感染爆発ですでに市民の半数以上が感染し

たと推定する報告もある。

いずれにせよ、中国は新型コロナの”震源地“でありながら、世界で最も(強いて言えば

北朝鮮に次ぐ2番目の)”感染不拡大の国“であった。しかしながら、これまでの世界の感

染状況を振り返ってみると、いずれは同じ道をたどることになるのではないかという気

がしてならない。

それを望んでいるわけではないが、新型コロナウィルスとの戦いは、つまるところ

“中国を出でて中国に還り、旧型すなわち普通の風邪として認知されるまで続く”

と覚悟しておいたほうがよさそうだ。

                           2022.3.19