樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

コロナより深刻な認知症(J-95)

 

新型コロナの嵐が2年以上吹き荒れ、日本は6回目の波に襲われている。この間に確認さ

れた感染者は1月14日までの累計で183万人を超え、感染力が増したオミクロン変異株

による第6波は、第5波を超える大波になるのではないかと懸念されている。

ところが、幸いにというか不思議なことにというか、身近なところでは感染者が未だ

一人もいない。そのためか、騒ぎの大きさの割には実感が薄い。よりリスクが高いと

脅されてきた高齢者もこの頃は緊張感が薄らいでいるように思う。

実は、高齢者にひしひしと迫ってくるような懸念を抱かせているものは他にある。

それは認知症である。体が元気であればあるほど、残りの長さが怖いのである。

 

1月12日、毎日新聞の小さな記事が目が留まった。

それは、ワシントン大学などのチームがまとめて発表した論文の紹介記事で、

“各国が対策を取らないと世界の認知症患者が、2019年の5700万人から50年までに約3倍

の1億5300万人に増える” というものだ。

日本は、412万人から1.3倍の524万人という予測で、対象国(195か国)の中で最も増加

率が低いと分析されているが、中には10~20倍に増加すると予想されている国もある。

コロナの場合は、感染者が拡大する一方で完治する人も10日前後の遅れで随伴するの

で、ある時点における患者数はそれほど多くならない。1月14日現在、累計感染者数が

183万3640人といっても、療養中の人は64,605人だ。一方、認知症患者はほとんど完治

することがないので、そのまま数値が積み上げられてゆく。厚労省の推計では、2020年

で約600万、2025年には700万人に達すると予測されている。これに“隠れ認知症”やMCI

(Mild Cognitive Impairment 、軽度認知症障害)を加えるとさらに多くなる。

いずれにせよ、恐るべき数字である。

 

認知症にはいろんなタイプがあり、多いのはアルツハイマー型と血管性である。

しかしそのメカニズムはよくわかっておらず、治療法も無きに等しい。

最近になってようやく、アミロイドβという本来脳を護る働きをするタンパク質が、

「炎症」「栄養不足」「毒素」などの攻撃に長くさらされると、逆に脳を攻撃するよう

になるということが分かり(仮説)、アミロイドβを除去する治療法の開発が進められ

ているといった段階だ。まだ明るい見通しは立っていない。

だから新型ウィルスと同じく、「予防」が対策の中心になる。

しかし、その「予防」もこれといった対策があるわけではない。厚労省のH.P.には、

認知症の予防とは、認知症になるのを遅らせるという意味である“と書かれており、

予防効果があるものとして挙げられているのは、「適度の運動」、「バランスのとれた

食事」、「良質の睡眠」、「人的交流や趣味」といったものだ。

これらは、いずれもよく耳にする「万病対策」に他ならない。いわば「健康管理」だ。

一番効果がありそうなものを考えてみると、社交ダンスや麻雀のように、仲間や相手を

必要とするゲーム性のあるものが浮かんでくるのだが、それらの機会は長引く“巣ごも

り生活“で著しく減少しているに違いない。

経済への影響もさることながら、コロナ対策は認知症の増加にも大きな悪影響を及ぼし

ている。むしろ認知症対策こそが喫緊の課題だと言いたいが、言えばそれは本末転倒だ

大袈裟だと非難されるだろうか。それとも、アホな老人が飲み会のないことをボヤいて

いると一笑に付されるだけだろうか。

                              2022.01.15