樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

漠然とした不安(J-92)

“キット来る”と脅され続けてきたコロナ第6波の気配がない。

ある意味不気味な沈静化がここまで続くと、オオカミ少年の譬えが頭をよぎるものの、

漠然とした不安はぬぐえない。

その訳は、この沈静化が日本だけにみられる特異な現象であり、しかもその理由が分か

らないからである。

世界に目をやると、米欧ではワクチン接種が進んでいるにもかかわらず、1日数万人台

の感染再拡大が続いている。

米欧に特殊事情があるわけでもない。対コロナ優等生と言われた国々も同様なのだ。

ベトナムでは11月半ばから連日1万人越えの感染が続いており、オーストラリアは10月

13日に2029人のピークを記録した後、11月15日に995人まで下げたものの再び上昇に転

じている。ニュージランドも数字は小さいが同じ傾向である。

“K防疫”と自画自賛していた韓国は、日本に負けじと行動規制の緩和に踏み切ったあと感

染が急拡大し、過去最大規模の7000人前後に膨れ上がって収まらない。

日本だけが何故収束しているのか‥・何度も繰り返される”謎”である。

そんな中、ips 細胞研究所の山中先生が退任するというニュースが伝えられた。

山中先生は以前、日本の謎“ファクターX”を是非明らかにしたいとおっしゃっていた

が、残念ながらそれはかなわず、このような言葉を残された。

“ウィルスの予測よりも人間の行動を予測するのが難しい”

“科学一般について、真理(真実)に到達することはまずない。いくら頑張っても近づ

くことが精いっぱいで、あとで間違いであったことに気づくことを繰り返している” 

言い訳にも聞こえるが、一流の科学者としての「誠実さ」と「謙虚さ」が表れたものと

みるべきであろう。しかし、ひねくれものの私としては、こう解釈する。

“自信ありげな人ほど胡散臭い”

私たちはと言って悪ければ、私は、あらかた2年になろうとするコロナ騒動を通じて、

いわゆる専門家と呼ばれる人や、専門家でもないのに断定的にものを言うコメンテータ

ーたちの意見に結構振り回されてきた。結果としてそれは裏切られることも多かったの

だが、漠然たる不安の原因が“わからないこと”である以上、断定的な物言いや希望的観

測にすがろうとするのはある程度仕方がないところもある。

そして、“分からないこと”の代表がコロナ感染における日本の特異性である。

世界の感染が再拡大しているなかで、日本だけがこのまま収束させられるだろうかとい

う疑問がそのまま不安につながっている。

だからこそ“ファクターX”の解明が必要なのである。

そして今また新しい説が登場した。APOBECという酵素の存在だ。

国立遺伝学研究所新潟大学の合同研究チームが発表した説を極めて簡単に説明する

と、コロナウィルスには、nsp14というウィルス自身の遺伝子修復を行う酵素があるの

だが、一方人間の側にもAPOBEC という酵素がある。APOBECはウィルスがコピーする

際にエラーを起こさせる働きがありウィルスを自滅させる。日本人はそのAPOBEC活性

が高いというものだ。

実際は(真実は)、いくつかの複合的な要因が重なって日本の特異性が生まれているの

だろうとは思うが、今はこのAPOBEC活性説も有力な要因の一つであると信じたい。

                            2021.12.13