(やっと気づいてくれたか・・)という思いがする記事を見つけた。
今日発売の「週刊新潮」が発表した“無視される真実”という特集である。
商売の邪魔をしてはいけないので詳細は省くが、その主張を総括した部分を紹介する
とこんな調子だ。
“ワクチン効果で重症者数も減り、医療がひっ迫しなくなった。ようやく自粛要請も緩
むかと思いきや、感染者数が増えているからと、五輪は無観客だ、再び緊急事態宣言だ
という声が沸き起る、もはや不思議の国だがコロナの出口は確実に近づいている”
まさにその通りではなかろうか。
ところがその同じ日に、来日したバッハ会長をまじえた五者協議を経て東京五輪の無観
客開催が決定された。”肩透かし”を食らったようなこの皮肉な結末を、週刊新潮がどう
とらえたかは定かでないが、第2弾は出しにくくなったに違いない。
私の偽らぬ気持ちを言えば、「新潮さん、一足遅かった!」である。
「無観客開催」というこの情けない決定に対し、この際“負け犬の遠吠え”と笑われるの
を承知で一言イヤミを述べさせていただく。
1年少し前、当ブログを開設して間もない4月10日、「コロナの効用」という話をアップ
した。このとき、もしかすると今年の日本人の死者数は、統計局がコロナ以前に想定し
た数値を下回る可能性があるという予想を述べた。
実はその予想は下表のとおり当たっていたのである。
2020 2019
総務省統計局の死亡数(予測値) 1,414,000人
厚労省人口動態統計の死亡数(実績) 1,372,648 1,381,093
この表の通り、2020年の死亡数は予想より4万人以上少なく、前年の実績値より8000人
以上少ない。これは、小さく見えるが決して誤差の範囲ではない。
実は、日本は世界的に見て「死亡率の高い国」である。「そんな馬鹿な」と感じるかも
しれないが、世界ランクは21位で、周りには人口の少ない国や発展途上国が並んでい
る。勿論これは急速な少子高齢化の影響だ。
1990年代までの日本は、人口1万人当たりの死亡数が6人程度で、死亡率は最も低い180
位あたりに位置していた。それが5年に1人くらいのペースで上昇し続け、現在は約11
人に達している。死亡数はこの後も増加し続け、2040には168万人に達し、2050年ごろ
から150万人レベルで横ばいになると見積もられている。だから2020年に前年の死亡数
を下回ったという結果は、全く予想外の出来事なのである。
もう少し詳しくデータを見てみよう。
同じ厚労省の人口動態統計から死因別に分類したデータを大項目ごとに上位から並べて
みるとこうなる。数値は人口10,000人当たりとし、割合は全体に占める(%)である。
死亡原因 2020(R2) 2019(R元) 割合
新生物(がんなど) 317.7 315.1 28.5
循環器系疾患(脳梗塞、心不全など) 280.2 283.3 25.2
呼吸器系の疾患(肺炎など) 140.1 156.2 12.6
老衰 129.6 119.6 11.6
不慮の事故・自殺 53.7 53.9 4.8
(自殺 のみでは 16.4 15.7 1.5)
以下15項目ほどあるが割合が小さいので省略する.
コロナという分類はないので、その多くは呼吸器系疾患に入れられていると思われる
が、注目すべきはその項目が2020年に前年より減少していることだ。その理由は他でも
ない、コロナの流行でインフルエンザが流行らなかったことにある。
もう一つ注目すべきデータは自殺者の増加である。交通事故死などの減少により大項目
ではわずかに減少しているのだが、自殺のみを取り出してみると700人以上増加してい
るのである。この原因にコロナがあるとするならば、今年はさらなる悪化を懸念しなけ
ればならない。
政府として一番大事なことは、老衰以外の理由で亡くなる人を減らしていくことであ
る。いわゆる専門家には、その視点が欠けているのではないだろうか。
コロナとのおつきあいはかれこれ1年半余り、もはや得体のしれない不気味な存在では
なくなっている。今も新規感染者が1日1万人程度いるイギリスは、すべての規制を撤廃
しようとしている。そこには、毎日の死者が数人程度まで減少し、コロナはさほど怖い
ものではなくなったという意識の変化がある。
面白いことに、米・英・伊・西など感染爆発の地獄を経験した国ほどその後の動きが
たくましい。逆に優等生と言われた日本はいつまでもビビりまくって、「さざ波みたい
なもの」と言っただけで袋叩き似合う始末である。
いずれにせよ、今回の「無観客開催」決定は、”自己都合”以外の何物でもなく、世界の
アスリートに対して礼を失する所業である。
それにも増して残念なのは、この決定がポピュリズムの圧力に屈した形にしか見えない
ことだ。世論を無視する政治家は困るが、世論に翻弄され支配される政治家は、なおの
こと困る。世論は時に暴走するからである。
2021.7.9