樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

さくら満開ー楽しみな二人(J-56)

あちこちから開花宣言や花便りが届けられる中、こちらに一つ、あちらに一つ、あっ晴

れな花が開いたというニュースだ。

こちらの花はJLPGAツアーの小祝さくら、今年第一戦のダイキンオーキッド(沖縄)に

続き、先週のTポイントENEOSでも優勝し、早くも3戦で2勝を挙げた。この2戦、いず

れも最終日の逆転勝利であった。どちらの試合もなんとなく彼女が勝ちそうな予感がし

たが、そう思わせるほど現在の状態は安定しそして強い。Tポイント・ENEOSの最終日

最終組は、絶好調のサイ・ペイイン(台湾)と韓国の実力者ペ・ソンウ、イ・ミニョン

の3人組で、イ・ミニョンは優勝スコアを15アンダ-くらいになりそうだとコメントし

ていた。小祝は一つ前の組で首位とは3打差、勝つためには7アンダー以上の猛チャー

ジが必要となる。さすがにそれは無理かとも思われたが、最終日はピンの位置が難しく

おまけに10m前後の強風が舞っていた。それが小祝には幸いした。最終組が揃って

スコアを落とす中、小祝は2アンダーにまとめて逆転したのである。

JLPGAは昨年コロナの影響で試合数を大幅に縮小し、賞金女王などは今年と統合した成

績で決定されることになっているが、小祝はこの勝利で、賞金女王レースでもトップに

立ちメルセデスランキングも1位に躍り出た。試合は沖縄・高知・鹿児島と、あたかも

桜前線のごとく北上しているが、彼女もそのさくら前線に乗って北上しそうな勢いがあ

る。

彼女はいわゆる黄金世代(1998年度生まれ)の一角である。4月生まれなのでその

中では長姉的存在だ。プロ入りは2017年、ライバルは多く2019年、2020年にそれぞれ

1勝を挙げているものの実績としてはまだ駆け出しの部類である。しかし、これまでの

着実な歩みには非凡なものが感じられる。

JLPGAは不動裕理の時代が長く続いたが、その後は韓国選手をはじめとする外国人選手

に圧倒される場面が多く興味が薄れていた。しかし、3,4年前から有力な新人が一気に

出現し俄然面白くなってきた。

私が小祝さくらの名を知ったのは、スポーツ欄の試合結果に名前をよく見かけることに

気づいた2018年のことだ。この年彼女は13試合でトップ10入りを果たし、そのうち2位

が4回ということで新人賞を獲得した。しかし、その姿を映像で見た時の感想を正直に

言えば “ここまでかな”であった。なんだかふにゃふにゃしていて、アスリートらしさ

や勝負師的な内面の強さが伝わってこなかったのである。実はその印象は今もほとんど

変わっていない。

しかしそれは大いなる誤解であった

彼女の歩みをスタッツ・データから、注目すべき項目の順位で見てみよう。

 

            2018   2019  2020(*1) 2021

 平均ストローク    19 位   10    4     1

 平均パット数      22    16    9     6

 パーセーブ率      20    9    4     2

 サンドセーブ率     62    81    17     2

 リカバリー率(*2)  43    15    6     2

 パーブレーク率(*3) 15    14    4     2

 

(*1):12月末までのデータ

(*2):パーオンできなかったホールをパー以上で終わる割合

(*3):バーディー以上である割合

 

このデータが示すように、彼女は着実にしかも急速に実力を伸ばしている。

最後の三つは彼女の強さの証明であり、安定した成績の根拠となるものだ。

今のところ海外試合出場のプランは持っていないようだが、ぜひ挑戦してもらいたい

ものだと思う。

 

さてもう一つ、あちらの花はMLBである。

「イチバン・ピッチャー・オオタニクン」とアナウンスされればそれは高校野球だが、

何とMLBでそれが実現した。

オープン戦ではあるが、3.22のパドレス戦でエンゼルスの大谷選手が一番・投手として

出場し、投げては4回を2安打1失点にまとめ、打っては2安打1四球とまるで漫画の主人

公のような活躍をいとも簡単にやってのけた。

スポーツ・ニッポンによると、レギュラーシーズンでは120年前にジャイアンツのジョ

ーンズという選手が一番投手で試合をした記録があるという。しかし、ジョーンズの本

職は外野手で、ダブルヘッダーの投手不足に窮した苦肉の策らしく、彼の投手としての

出場は2試合のみにとどまっている。

本格的な二刀流を目指す大谷選手への注目と期待は膨らむばかりで、スポーツ専門紙の

アルダヤ記者はこの快挙を「Absurd」と表現し、地元紙ロサンゼルス・タイムのハリス

記者は「fabled milestone」を成し遂げたと報じた。

大谷選手は、投げても打っても、その姿には絵になる美しさがある。一方、この種の

天才にありがちな”イヤミ“は全く感じられない。ナイスガイそのものだ。

彼の活躍が多くの野球少年に与える影響は計り知れないものがあり、ケガをさせないよ

う大切に扱ってほしいと願いながら、大いなる期待を寄せずにはいられない。

                          2021.3.23