樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

ワクチンを知ろう(J-49)

新型コロナの猛威は一向に衰えを見せず、なかなか先が見通せない中、最後の切り札として期待されていたワクチンの接種が、米・欧・中・印などで始まった。

相対的に、日本はかなり遅れていると言わざるを得ないが、ワクチン担当に指名された

河野規制改革担当相の旗振りで、2.27(水)、川崎市でワクチン接種のシミュレーショ

ンが行われた。いよいよ医療関係者から高齢者へと優先順位に応じて“プロジェクトX”が開始される。

 

今回使用されるワクチンは、いずれも輸入品である。日本の医学・生理学や化学の分野

ノーベル賞などから推定すれば、世界のトップレベルにあるはずで、本来世界に供給

する側にあるべきだと思うのだが・・・と素朴な疑問を禁じ得ないが、現実は現実だ。

毎日新聞によると、どうやらその原因はMMR(麻疹、おたふくかぜ、風疹の三種混

合)ワクチン事件にあるらしい。このワクチンはいわゆる生ワクチンの一種で、三社が

それぞれ開発したワクチンを混合したものであった。それがトータルで1800人ほどの無

菌性髄膜炎を発症させ、国の責任が問われる事態となり1993年に廃止された。

それを機にワクチン開発にブレーキがかかったというのである。真相は分からないが、

現在の主流となっている遺伝子工学を利用した分野での遅れが気になるところだ。

しかもその原因が、どうも質的な問題ではなく規模の問題のようで、我が国の危機管理

体制の基本的な欠陥を現わしているようにも見える。

 

ワクチン接種が近づいたところで国民の意識はどうかと言えば、あるアンケートによれ

ば、驚いたことに、約半数の人が“摂取したくない”という意思を示している。どうも

これまでになかった技術に不安を抱いているようだ。

専門知識がないので、理解は不十分であるが、私なりに調べたところをまとめてみた。

 

まず従来型のワクチンには次のようなものがある。

  • 弱毒化ワクチン(生ワクチン)

  鶏卵などを使って大量にウィルスを培養し、毒性のないものを選別して使用する

  麻疹、風疹、BCGなどのワクチンで非常に手間暇がかかる。

  • 不活化ワクチン

  薬剤を使って無力化したワクチンを投与する

  インフルエンザ、日本脳炎、ポリオなどのワクチンで実用化され、新型コロナ用と         

  して、KMバイオロジクス(日)、シノパック、シノファーム(中)などが開発中

  • 組み換えタンパク質ワクチン

  培養細胞や酵母を使ってウィルスの一部構造(タンパク質)を作り投与する

  B型肝炎、百日咳、破傷風などのワクチンで、コロナ用として塩野義製薬(日)

  ノヴァヴァックス(米)、サノフィ(仏)などが開発中

  従来型のこれらのワクチンは、実用までに10年近くかかることが普通であり、

  新型コロナ用として開発中のものも、数年はかかると見込まれている。

  しかし、次にあげる新技術(遺伝子工学)によるワクチンは実はその効果や

  副反応などが十分に確認されたとはいえず、従来型も並行して開発する意義は

  十分にあると考えられている。

 

次は新技術によるワクチンである

  • ウィルスベクタ―ワクチン

  無害なウィルス(アデノウィルスなど)を運び屋(ベクタ―)として人工合成した

  DNAを注入し、体内でウィルスのトゲトゲの部分をつくらせて免疫を獲得する。

  実際の感染に近いので効果は高いと期待されるが、運び屋(ベクター)自体が

  (とくに2回目以降や数年後には)排除される懸念がある。

  輸入契約を結んでいるアストラゼネカ(英)のワクチンがこのタイプで、中国の

  カンシノ・バイオロジックスも同じである。

  ただ、中国が開発したワクチンに使われているアデノウィルス(Ad5)はエボラ用

  に使ったもので、中・米で40%、アフリカでは80%の人が既に抗体を持っているた

  め、多くの人に効かない可能性があると言われている。

  • DNAワクチン

  新型コロナのDNA を直接投与し体内で新型コロナウィルスのタンパク質を作らせ免

  疫システムを活発化させる。コスト、スピードで優れているが、体内にDNA

  が残存するので、その影響が懸念される。

  • mRNAワクチン

  DNAはタンパク質の設計図であるが、実際にはそのコピーともいえるmRNA

  介してタンパク質をつくる。そのmRNAを投与してコロナウィルスのトゲトゲ部分

  を作らせ免疫を獲得する方法である。RNAは非常に壊れやすくて超低温で管理する

  必要があるが、細胞の核内には入らないので人体の遺伝子情報に影響しない(がん

  化しない)といわれている。

  ただし、承認されたのは今回が初めてで、輸入されるファイザー(米)、モデルナ

 (米)のワクチンはこのタイプである。

 

遺伝子や免疫の話は、分からない言葉が多くて理解するのが難しく、間違っているとこ

ろがあるかもしれないが、以上が私なりの理解である。

私は後期高齢者なので、優先的にワクチン接種を受けられそうなのだが、それで生活様

式をすっかり元に戻せるのかというと、どうもそうではなさそうなのだ。

 

基本的にワクチンというのは、ウィルスなどの病原体の特徴を、前もって私たちの免疫

システムに覚えさせるもので、いわば「免疫軍・訓練教官」のようなものである。

だから、感染を未然に防止する働きも、直接ウィルスを排除する働きもない。

ウィルスと戦うのは、あくまでも自分の免疫システムなのである。

さらに、今回のような注射によるワクチンは血液中にIgG抗体を作らせるものであるか

ら鼻や喉のウィルスには効かない。つまり今回のウィルスは、端的に言えば重症化を防

ぐためのものと言える。重症化することがなければただの風邪と同じことになるので、

普段の生活に戻せるというわけだ。

間違えてならないのは、ワクチンを接種しても、鼻や喉についたウィルスには影響がな

いので、PCR検査が陽性になることもあれば、他人に感染させる可能性もあるということだ。

従って、ワクチン接種後もマスク着用や三密を避ける行動は当分続ける必要がある。

それをどこまで続けるのかと考えると嫌になるが、顰蹙を買うのを承知で言えば、高齢

者への接種が終わればもういいのではないかと思う。なぜなら、50歳以下ではほとん

ど普通の風邪と変わらないし、20歳以下ならワクチン接種も感染も似たようなものだ

と考えられるからである。

それにしても、何をもたついているのであろうか。準備のできた自治体からさっさとや

ればいいと思うのだが、そうするとまたあちこち不満が噴き出すことを恐れているのだ

ろうか。

今回の事象もまた、我が日本の平和ボケと悪しき平等主義の蔓延を思わせる。

                            2021.1.28