樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

謝罪すべきは誰なのか(J-46)

不愉快なニュース

新年早々の不愉快なニュースである。

韓国のソウル中央地裁が8日、日本政府に対し、提訴した元慰安婦12人に賠償金の支払いを命ずる判決を下した。

原告の7人は既に死亡し、残る5人の元慰安婦も90歳以上、考えるまでもなく異様な裁判である。

判決の要旨を毎日新聞から引用すると、

<主文>“被告は原告にそれぞれ1億ウォンを支払え。仮執行できる”

<理由>被告の行為は計画的、組織的、広範囲に行われた反人道的な犯罪行為で、国際規範を違反したものと判断される。当時、不法占拠中だった朝鮮半島でわが国民である原告に対し行われたもので、国家の主権的行為だとしても主権免除は適用できない。原告が提出した証拠などを総合すると、被告の不法行為が認められ、原告は想像しがたい精神的、肉体的苦痛を受けたとみられ、現在まで被告からきちんとした謝罪や賠償も受けていない。

諸般の事情を考慮し、被告が支払うべき慰謝料は少なくとも1億ウォン以上とみるのが妥当だ。“

以上の通り、ツッコミどころ満載なのだが、被告の出席がなく、また、テロリストの

安重根が英雄になるが如く、立場によって見方は変わるので、憤慨はしない・・ことにしておく。

この判決に対し、青瓦台は沈黙、韓国外交省は“判決を尊重し被害者の名誉回復のために努力するとしながら、15年の日韓合意は両国政府の公式合意であることを確認する”と付け加え、予防線を張ることも忘れなかった。当然ながら、日本政府は強く反発し、駐日韓国大使を呼んで抗議した。

 

この記事を「毎日新聞」で読んだ時、私は、“随分変わったな”という印象を持った。

一応一面に載せてはいるが、トップではない。さらに、2面の「検証」5面の「社説」

7面の「論点」と、全体を通じてどちらかと言えば韓国側に批判的な構成となっているのである。コメンテーターも偏っていないし、従軍慰安婦という用語もどこにもない。

となると朝日が気になって、コンビニに走ったのだが、見ればこちらも同様である。

1面では最後(4番目)の記事で、3面=関係暗雲、9面=考論、12面=社説となっており、内容は、“これが朝日か”と感じられるほど“角度のない”記事となっている。

15年の「日韓合意」を文政権が一方的に破棄して以来、流石の両紙も愛想が尽きたらしい。

この日韓合意は、国連、米欧をはじめとする国際社会がこぞって歓迎し、日本のメディアや識者の多くも賛成の声を上げたが、ひとり済州島出身のオ・スンファ(呉善花

先生だけは違っていた。

“65年の日韓協定さえ反古にした韓国が、この約束を守るとは信じがたい「賞味期限は半年だ」”とコメントし、皮肉にもその予言通りとなったのである。

では、韓国紙はどうなのかといえば、韓国の主要紙も、どうやらここまでの判決は予想していなかったようである。

というのも、このところ水面下では、韓日関係改善の動きがあったからで、前日の中央日報も“日本政府に賠償を命じる判決が出る可能性もある”と予想していたくらいなのだ。

そして、“青瓦台は司法に介入できないというスタンスであり、また日本側から関係改善策が出される可能性もないことから、日韓関係の前途が案じられる”といったような残念さが滲むトーンとなっている。

つまり、俯瞰的に見れば、韓国の司法が暴走を始め、日韓両国のメディアが共に

“冷めている”という風景が目に浮かぶ。

 

これまでの経緯

まず、この裁判の経緯をざっと振り返ってみよう。

原告の12人が声を上げたのは2013年で、何と70年以上も前の慰安婦時代の慰謝料を求め民事調停を請求したのが始まりだ。その前に彼女らは、日本の弁護士などにそそのかされて日本の裁判所に訴えたのだが、ことごとく却下され、2016年今度はソウル地裁に提訴したのである。その判決がようやく出たというわけだ。

ハンギョレ新聞によると、13日にはもう一つ、同様の裁判の判決が出される予定らしく、この裁判にはあのトランプ大統領に抱き着いたハルモニ、イ・ヨンス(李容洙)なども出廷するらしいのだが、なぜか日本のメディアはそこには言及していない。

 ・・・加筆修正(1.15)・・・

どうも静かだなと思ったら、13日判決予定の民事15部(ミン・ソンチョル裁判長)は

突然弁論再開を通知、判決は延期となっていた。それが青瓦台の指示によるものか、

先の判決(民事34部、キム・ジョンゴン裁判長)に対する内外の反応によるものなのかは不明である。

・・・・

 

そもそも70年以上も前の問題が何故蒸し返されているのか、その始まりにさかのぼって

おさらいをしてみたい。

・日韓の戦後補償の問題は1965年の日韓請求権協定により、日本が5億ドル(無償3億、

有償2億)、民間融資3億ドルの経済支援を行うことで、完全かつ最終的に解決するという協定を結んだ。そして韓国は、当時の国家予算の2倍以上に匹敵する資金を基に“漢江の奇跡”とも呼ばれる経済発展を成し遂げた。この時、個人に対する補償分は韓国政府の要求に基づき、経済協力金の中に一括された。つまり、個人補償は韓国政府の責任となった。

その後約20年間、両国の間に歴史問題による外交案件は生じなかった。当時、戦時中における慰安婦なるものの存在は周知の事実であったが、それが大きな問題に発展するとは、当の元慰安婦たちを含めて、誰も想像していなかっただろう。

ところが、次のような経過を辿って大問題に発展する。

・1973年、千田夏光・元毎日新聞記者が、自著の中で「従軍慰安婦」という造語を始

     めて登場させた。

・1983年、吉田清治という作家(自称)が、済州島での慰安婦狩り(強制連行)を

     生々しく綴った「私の戦争犯罪」を出版、朝日新聞などがその証言をこと

     とあるごとに取り上げ、世界中に事実として拡大される。吉田は96年、証言

     の多くは創作であることを認めその後消息を絶っていたが、2014年死亡して

     いたことが判明。

・1989年、青柳敦子という大分県の主婦(元全共闘?)が、在日朝鮮人活動家・宋斗会

     の影響下、韓国で慰安婦裁判の原告を募集する。(この時は反応なし)

・1991年、植村隆記者(朝日新聞)が、元慰安婦・金学順をスクープする。

     記事には女子挺身隊の名で強制連行されたとなっていたが、3日後の会見

     で、金は14歳の時40円で妓生の検番(置屋)に売られ、3年芸を教えられた

     が妓生として働くには年齢が満たず、養父(置屋の主人)に中国に連れてい

     かれて兵士の相手をさせられたと証言した。

     始めて原告候補者が現れたことで、高木健一や福島瑞穂などの、いわゆる人

     権弁護士たちが蠢き始める。

・1992年、吉見義明・中央大教授が、国家権力の関与を示す証拠となる文書を発見

     したと朝日が1面トップで報じる。訪韓直前の宮沢内閣は、何を慌てたか、

     加藤紘一官房長官のお詫びに続き、首相自身が韓国で8回にわたりお詫びを

     するという事態に発展する。しかしその文書をよく読めば、“民間業者の不

     法な行為を取り締まるよう指示したもので、最大の焦点となっていた「強制

     連行」の存在を否定する証拠となりうる文書であった。

・1992年、戸塚悦朗・弁護士が国連の人権委員会で、慰安婦の名称としてsex slaves を

     使うことを提唱した。その後、多くの場でこの呼び名が使われるようになっ

     た。

・1993年、河野洋平官房長官がいわゆる“河野談話”を発表。

     日韓関係の改善を進めようとしていた宮沢内閣は、河野官房長官の談話とい

     う形で、元慰安婦については“本人の意思に反した広義の強制性があった”と

     してお詫びと反省の声明を発表した。然しその文案作成の過程において、

     韓国側との調整があったことが明らかになっており、“日韓合作”の疑いが濃

     厚となっている。しかし世界は、韓国側が主張するように“日本政府が強制

     連行を認めた”根拠“として挙げるようになり、”ハメられた“感の強い談話で

     ある。

     その後の内閣は、常に踏み絵のごとく河野談話へのスタンスを聞かれること

     になり、すべての内閣が“踏襲する”方針を述べざるを得ない状態に置かれて

     いる。

 

こうして経緯を振り返ってみると、次第に明らかになってくることがある。

それは「慰安婦問題は“和製”である」ということだ。

では、ジュラシックパークの物語のように琥珀に包まれて眠っていた怪獣の卵を掘り起こし、巨大化させた張本人は誰なのだろうか。

 

謝罪すべきは誰なのか

前段に挙げた人たちには、それぞれ日韓関係をこじらせた責任の一端がある。

しかし、すべては朝日新聞吉田清治のウソの証言に”お墨付き“を与えたことから始ま

っているように思う。大新聞のお墨付きがなければ、戦後70年を過ぎても解決しない問

題にまでは巨大化していないはずだ。

2014年になって、朝日もようやく自分たちが犯した“誤報”を認め、自身の紙面で検証記

事を発表したが、そこには謝罪の言葉はない。凝縮すれば“自分たちも騙されていた、

その訳は・・・“という弁明記事になっている。

慰安婦問題で朝日が棄損した国益は計り知れない。国民に損害賠償せよとは言わない

が、国民に対して謝罪し、世界の誤解を解く活動をするのは当然ではないか。

多くの人が「朝日は反日だ」という。しかし、私はそうは思わない。

確かに反日的なふるまいをするが反日ではない。では何と言えばいいのか。

私は、彼らは「愛国」あるいは愛国的なものが嫌いなのだと思う。

愛国=亡国と信じているのだと思う。愛国的なものすべてに反発し、国民をその方向に

向かわせないのが自分たちの使命であり、それこそが崇高な目標であると信じているの

だと思う。残念なことに、それが左翼思想と結びつき、神聖なる目標のためにはウソや

捏造も許されるという体質が出来上がっている。それは一見真逆のように見えて、

愛国無罪」と同じことだ。

 

“謝罪すべきもの(たち)”は韓国側にも存在する。

それは、歴代の韓国政府である。かれらは例外なく反日を政権の獲得・維持に利用してきた。

今回のソウル地裁の裁判官も突然変異で生まれたわけではない。長年にわたる反日政策

反日教育により、”反日でなければ生きにくい社会”をつくりあげてきた、必然の結果なのだ。

それが今、自らの首を絞めている。

韓国政府や裁判官は「元慰安婦の名誉を回復する」という。

では、何が彼女たちの名誉を回復することになるのか。

それは、“自ら売春したのではなく強制されたから”と認定してやることだと考えてい

る。しかし、それは不可能に近い。一人や二人ならできるかもしれないが、すべてとい

うわけにはいかない。証拠は揃いすぎているうえに、既に大多数の元慰安婦が補償金を

受け取っているのだ。だから、その認定は逆に、多くの慰安婦の不名誉を確定すること

になる。つまり、”少数の名誉を回復して多数の不名誉を確定する”ことになる。

彼らはそのことに気づいていないのだろうか。

また仮に、すべての慰安婦の名誉を回復するとどうなるのか。

それは、強制連行や奴隷的境遇に何の抵抗も示さず、進んで協力した同胞も多数存在し

たという韓国民の不名誉を確定することになる。

いずれにせよ、これらの方向では、彼女らの名誉を回復することは出来ない。

ならば、どうすればよいのか。

それは、さほど難しいことではない。事実を明らかにすればよいのである。

当時、売春は合法であった。

家族のために、或いは貧しさから脱出するために、いわゆる”身を売る“ 行為は、

美談とまでは言わないが、さほど恥ずべき選択ではなかった。古来、遊女と客の恋物語

は、あまたある。

彼女らを引きずり出してウソや作り話をさせても名誉回復にはならない。

慰安婦たちの先は短い。嘘で固め、恨みを抱えたまま生涯を終えさせたくないなら、

彼女らの過去をそのまま理解し、評価してやる以外にない。 

                            2021.1.11