樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

いちばん大事なこと(Y-23)

 

「いちばん大事なこと」というのは養老孟司先生の本の題名です。

その帯封に、“人類は百年後までまともに生き延びられるか!?”

と書いてある通り、先生はこの本で環境問題を取り上げています。

 

人は誰でもそれぞれの人生において、“一番大事なこと(もの)は何か”

について考えることがあります。私も一度や二度ではありません。

そして50歳くらいの時だったでしょうか、一つの結論のようなものに

たどり着いような気がします。それは、

“一番大事なことは、組織や個人など、その主体によって異なるもの

であり、またTPOによって変化するものでもある“

ということでした。

つまり、「いちばん大事なこと」という言葉は、その前につくべき「今」と

「○○にとって」という言葉が省略されているということです。

だから、時には2番目以下の大事なことが一番になったりもするという

ことで、端的に言えば”優先度“の問題ではないかということです。

要するに、「いちばん大事なことは、無数にある」というのが結論でした。

 

ところが最近になって、主体やTPOにかかわらず、「いちばん大事なこと」

の数々を、統合する概念があると考えるようになりました。

結論から言うと、それは、「持続」であり、それを達成するカギは「バランス」

だということです。

 

まず、地球について考えてみましょう。

「地球を守る」ということは、「現在の地球環境を守る」ということであり、

それは現在の地球生物すべてに当てはまります。私たちにとって厳しい環境も

そこに棲む生物にとっては快適な環境です。すべての生物にとって、今の環境が

そのまま持続することが“いちばん大事”なのです。

そのバランスを破壊する要因としては、太陽や隕石などの外的要因と地球自身が

原因となる内的要因がありますが、そのどちらにも可能性があります。

内的要因は、長いスパンで見ればプレートテクトニクスの問題もありますが、

もっと近くて現実的な要素は、生物が引き起こす環境変化の問題です。

地球環境は長い時間をかけて生物が作り上げてきたものでもあります。

変化をもたらした主役は、そのとき最も繁栄した生物であり、それらの生物は、

やがて自らが作り出した環境変化により衰退・絶滅しました。

今この地球で最も繁栄している生物は、人間と人間に飼われている家畜やペット

だと考えられます。だから、すでにその影響が顕在化しているとおり、

次に地球環境を変化させる可能性を持つ生物が人間がらみであることは疑う余地

がありません。この100年、人口増加のペースはすさまじいものがあります。

少子化対策は“多子化”に向かうのではなく、少子化を是とした対策に向かうべき

でしょう。少子化は、人間以外のすべての生物の願いであるばかりでなく、

人間自身にとっても実は喜ぶべき事象ではないでしょうか。

 

次に、「組織体」について考えてみましょう。

国家や企業といった組織体の目標もやはり「持続」であると考えられます。

たいていの日本人が皇室を敬愛し大切に思うのは、それが日本の伝統・文化の

象徴であり「持続」の象徴であるからだと思います。世界の歴史を見れば

“国王殺し”は珍しいことではありません。我が国では、皇位継承の争いはあり

ましたがそれが途切れることはありませんでした。

日本は紛れもなく“保守的なくに”です。曖昧だとか煮え切らないとかいろんな

批判を受けますが “まあそんなところか” というバランス感覚があるのです。

”ネバナラナイ“というイデオロギー的な感覚が主流になったことはありません。

企業もやはりその目標は「持続」です。

今でも株式を公開しない企業は、その目標が「拡大」ではなく「持続」である

ことを如実に示しています。できればそうしたいと思っている企業は多いはず

です。日本の企業経営者は、会社は経営者・社員や株主のものではなく、社会

のものだと考えているように思います。カルロス・ゴーンは尊敬されないのです。

 

最後に「個人」についてです。

個人にとってもやはり「いちばん大事なこと」は、「持続」です。

もしかすると、“誰にでも、いつでも”ではないのかもしれませんが、一般的には、

命を繋ぐことが「いちばん大事なこと」でしょう。

そして、そのためには生活習慣や食事などのバランスが重要です。

 

「持続」と「バランス」、実に平凡で当たり前なことの重要性を改めて感じながら

77歳の日々を過ごしています。

                         2020.0925