樗木(ちょぼく)の遺言と爺怪説

愛国的好奇高齢者の遺言と違和感をエッセイ風に・・・

菅野投手の開幕9連勝に思う(J-31)

 

8.25(火)、神宮球場での巨人ヤクルト11回戦は、巨人ファンならずとも

注目の一戦であった。

それは先発に予定されている菅野投手に、この試合に勝てば堀内以来、

実に54年ぶりの「開幕9連勝」という記録がかかっていたからである。

私も前の週から楽しみにしていたのだが、何と実況中継がない。

他のセ・リーグのゲームは複数の局が中継しているにもかかわらずである。

仕方なく、スポーツナビの一球速報で観戦(?)することになったのだが、

そうしたファンは、私以外にもいたのではないだろうか。放送局も、もう少し

融通を聞かしてもらいたいものだと思う。

 

これまで菅野投手は、9試合に先発し8勝を挙げている。

唯一勝ち星を挙げられなかった試合の相手がヤクルトで、当然防御率の方も

最も悪い。しかも神宮球場は、彼にとっては、これまでの経歴で16敗という

”鬼門“なのである。

巨人は、直前の相手広島に3タテを食らい連敗中で、打線の調子もよくない。

ここまで、ことごとく連敗を止めてきた菅野ではあるが、

“今回ばかりは、負け投手にならなければ御の字だな”

それが試合前に抱いていた私の、いつわらざる気持ちであった。

 

物事は往々にして心配したとおりになるものである。

1回裏ヤクルトの攻撃、菅野は12番の坂口、山田にヒットを打たれピンチを

迎えると、続く3番青木のタイムリーであっさりと先取点を与えてしまう。

4番村上を併殺に打ち取り危機を脱したかにみえたが、5番雄平にもヒットを打たれ

2失点、早くも暗雲漂うスタートとなってしまった。

ところが、そこからが菅野の凄いところで、7階までのイニングをすべて3人で

切って取り、8回満塁の好機には自ら走者一掃のツーベースを放って試合を決た。

結局、91球5安打2失点で、余裕をもってリリーフ陣にマウンドを譲り、

こともなげに9連勝を飾った。

こうなると逆に、負ける要素が見えてこない。今年は負けないのではないかとさえ

思わせる充実ぶりだ。

 

この菅野を見ていて思い出したのは全英女子オープンの渋野日向子選手である。

彼女も大きなプレッシャーを抱えて全英の舞台に立ったことは間違いない。

初めてのリンクス、強風の中での見事なドライバーショットは、彼女にプレッシャー

は無縁かと思わせるものであったが、そこからの展開が悪く12番と連続のボギー

を叩いた。

さらに4番では、バンカー脱出に3打を要してトリプルボギー、最初の4ホールで

5オーバーという最悪のスタートとなってしまったのである。

彼女の代名詞ともなった”バウンスバック“を見せる場面もほとんどないまま、

2日間の予選のみで、昨年の女王は姿を消した。

アイアンショットの不調、経験の乏しさ(引き出しが少ない)、リンクスの不慣れ

・・・そういった要因を挙げる声は少なくない。

然し、私はやはり ”メンタル“ だと思う。

 

今年の全英女子を制したのは、ソフィア・ポポフというドイツ人の27歳だ。

彼女の世界ランキングは304位、米女子下部のシメトラツアーを主戦場とする

いわば無名の2軍選手なのだ。おそらくリンクスの経験もないだろう。

評論家はおろか彼女自身でさえ自分を優勝候補の一人に挙げてはいなかったに

違いない。

その彼女が何故優勝したのか・・・。

その答えはおそらく、いや明らかに”キャディー”である。

実は彼女のキャディーは彼氏であった。それが好循環を呼んだに違いない。

逆に渋野のメンタルはどうであったか。

前回の彼女は、“スマイリング・シンデレラ”としてギャラリーの大声援を受け、

その人気をバネに好循環をつくった。渋野にはギャラリーが必要なのである。

その証拠に、今年無観客試合の彼女は、どれも力を発揮できず精彩を欠いている。

 

話を元に戻そう。

あれやこれや考えると、やはり菅野のメンタルの強さが際立ってくるのである。

                          2020.08.27