5.25、とり残されていた首都圏と北海道の「緊急事態宣言」が解除され、
新聞の見出しに従えば「全面解除」となった。
しかし、これがゴールでないことは、
言う方も聞く方も十分承知しているわけで、
「で?」とでも言いたいような、少々しらけた発表の場となった。
世界が不思議がろうが、遅すぎようが、
結果としては、まあまあここまでうまく運んだ日本なのだから、
少しは胸を張ってもよさそうなものだが、現政権には“雄弁家”がいない。
首相の言葉は粘りのないソバのごとくぶつぶつ切れるし、
誠実そうで失言がないのが取り柄の西村大臣は、”専守防衛”で、
失礼ながら、大会社のクレーム処理担当のイメージが重なる。
さて事態が一段落したこの時、
首相か大臣の口から発信するのに、将にふさわしい言葉がある。
それは、
“これからがこれまでを決める”という言葉だ。
「これまで」は「これから」を決めるかに見えて、実はわからない。
しかし、「これから」は、まぎれもなく「これまで」を決めていく。
政府や知事の対策も、国民の行動も、そして志村けんの死も、
あらゆるものが、「これから」によって評価されていくのである。
この言葉は、藤原正彦さんのエッセイ(文芸春秋)にあったのだが、
2017.1.1に東京文京区の稱名寺のブログにも載っているので、
もっと広まっていてもおかしくないのだが、
残念ながら私は知らなかった。
一度でも目にすれば忘れるはずのない、この歴史的名言をである。
今回、今この時にこそふさわしいと紹介したのだが、
考えてみると、いつでも、どこでも、どんなときでも、
この言葉は、必ず人の心に訴える力がある。
消すことができない過去、思い出したくない過去、
あるいは逆に、いい思い出、自慢したくなるような出来事・・・
それらはすべて、
「これから」の生き方によってその意味が変わる可能性がある。
過去は「これから」によって書き換えられてゆくのである。
いつかこの言葉をもう一度、その時はYシリーズで、
取り上げてみたいと思う。
2020.05.27